2003年7月のこびん

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<第0009号 2003年7月31日(木) 本日のこびん>

      朝

すずめたちのさえずり
あとからあとからうまれ
でもいっぱいにならない

どこへ行った
どこへ行った


   * 挿一輪 *
 朝、気がつくと、うるさいくらいすずめたちのさえずりに満ちていることがあります。特に何も考えずにぼーっとしている時、不意打ちをくらったように耳元まで飛び込んでくることがあります。でも次々とやってくるさえずりで、まわりがいっぱいになることはありません。声はどこへ行ったのでしょう?消えた?それとも満ち溢れているのにただ聞こえないだけ?
 朝の空気って透明なようで実は様々な声がつまっている濃厚な気体なのかもしれません。ほら深呼吸。何か入ってきましたね。


<第0008号 2003年7月27日(日) 本日のこびん>

      さるすべり

あなたが何になりたいかは
あなた自身が知っている

さるすべりの真紅の花で
さるすべりを思い出すように


   * 挿一輪 *
 原色が似合う夏の景色のなかでもさるすべりの赤い花はことさら目立ちます。今までまるでほかのことを思っていても、見た瞬間「あ、さるすべり」と。
 あなたもいつもは自分自身のこと、すなわち個性のことや、自分がたった一つの存在であること、などは忘れています。さるすべりは必ずさるすべりの花を咲かせます。あなたがどういう花を、いや個性を開かせるのかは、あなた自身を見ればいちばん分かります。答えはあなたの中にあります。


<第0007号 2003年7月24日(木) 本日のこびん>

      自転車

車輪がとれて
サドルがとれて
ハンドルがとれて
土に半分埋まったように
さびたフレームの立ち往生


   * 挿一輪 *
 自転車は手軽です、買うのも乗るのも捨てるのも。時々道端でこうまで見事に!と思える放置自転車の残骸に出会うことがあります。まるでそのまま墓標のように見えます。
 立ち往生というと弁慶を思い出しますが、弁慶だって骨になれば立ったままではいられません。それに比べこの自転車は。切なくて思わず合掌したくなります、許してくださいって。


<第0006号 2003年7月20日(日) 本日のこびん>

      あおい

あおいのつぼみ
大きなネジリ棒が
またひとつほぐれて

夏の視線が生まれてくる


   * 挿一輪 *
 タチアオイの大きなネジリつぼみ知っていますか?巨大なキャンディーか、小さな理髪店の看板のようです。ゆっくりとほぐれて、目の覚めるような、子どもの頭の大きさほどの花が開くたびに確実に夏になってゆきます。
 でもつぼみのうちに、開いたときに何が出てくるか想像すると、けっこう楽しいというか、怖いというか、昔、人を食べてしまう花の出てくるB級映画のことを、思い出したりします。


<第0005号 2003年7月17日(木) 本日のこびん>

      朝

朝顔の花を見つけた子がいて
とんぼを指さした子がいて

風の馬が
何頭も駆け抜けてゆく


   * 挿一輪 *
 朝は下を向きがちです。眠いのかな?でも少し顔を上げると朝顔の花が見えて、ふと動くトンボの姿に誘われて、あなたの顔はどんどん上を向いてゆきます。そして、空!そこには梅雨の合間の空に、馬の形をした雲を押す風たちが。ね、あなたのまわりってけっこう広いでしょう?足元ばかり見ないでね。きっと何か見つかるよ。


<第0004号 2003年7月13日(日) 本日のこびん>

      紙ヒコーキ

紙ヒコーキ
飛ばして
飛んで

真紅のキャミソールに
あたって
落ちた


   * 挿一輪 *
 作って飛ばしたつもりでも、実は紙飛行機は自分自身なのかもしれません。どこへ行くかは風次第?真っ赤なキャミソールに当たったら、ラッキーですかね。でも落ちたまま誰も手にしなかったら、二度と空には帰れません。


<第0003号 2003年7月10日(木) 本日のこびん>

      雨のもと

空に
雨のもとがあるのなら
あなたに
雨を感じるもとがある


   * 挿一輪 *
 雨があってそれを感じるあなたがあって、それで初めてあなたにとっての雨が生まれます。雨だって何かに当たらなければ音がしない。風だって同じです。関わり合いって、複雑そうに見えて、一対一に絞ってみると意外と単純で分かりやすいかもしれません。要は何が、あなたの何に呼応したか?
 ね、雨をそんなに嫌わないでくださいね。


<第0002号 2003年7月6日(日) 本日のこびん>

      まなざし

みつめるまなざし
みつめられるまなざし
一つに出会うときが
いま


   * 挿一輪 *
 人は生きている間、意識するしないにかかわらず、何かを見つめています。目の前にある風景でもいいし、まるっきり違う心の中を見つめているかもしれない。同じようにいつも誰かに見つめられているような気がします。何かの拍子にお互いの視線が会ったときに出会いがあるのでしょうね。


<第0001号 2003年7月3日(木) 本日のこびん>

      あじさい

みんな目をとめながらも
通り過ぎて行くけれど
ふと立ち止まって
そっと触れてみたい



   * 挿一輪 *
 あじさいの花が盛りです。青からピンク、ガクアジサイとさまざまな種類がありますが、そっと触れたことがありますか?
立ち止まることって意外としないのですが、忙しいですか?
気がつくと真夏になってあじさいの花は過ぎてしまいます。
今のうちですよ。



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