2003年10月のこびん

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<第0035号 2003年10月30日(木) 本日のこびん>

      糸

どこまでも
ぴんと張っていなければいけない
どんなに細くても
どんなに長くても
少しのたるみもなく張っていなければいけない


   * 挿一輪 *
 ぴんと張った糸。何を思い出しますか?
 糸電話、風を受けた凧、推理小説の仕掛け、緊張の糸?赤い糸、なんてものもありますが、あれ不思議とたるんで、遠回りして、からまって、やっとつながるんですね。まるでお祭りの宝つりのよう。
 とにかく、ぴんと張った糸というものは、切れそうなはらはらどきどきとした緊張感と、潔いほどの鋭さを感じます。好きです、そんな糸が。細ければ細いほど、長ければ長いほど、透明感さえ感じます。そんな生き方ができれば・・・確かに自分の精神状態が良くて、体調が良くて、ならいいのですが、常にとなると厳しいですね。たまにはゆるめて、でもまたぴんと張るにはもっと大変だったりします。見ているのは気持ちいいのにな、勝手な言い分です。
 あなたは、ぴんと張った糸、好きですか?


<第0034号 2003年10月26日(日) 本日のこびん>

      虹

伝えたいことは
虹にのせよう
どんなに遠く離れていても
あなたの瞳に伝わるさ


   * 挿一輪 *
 虹を見るとわくわくします。いえ、本当は、雨がまだ降っているのに陽光が一筋さしてきたときから、虹の予感がするのです。思わず外に飛び出して空を見渡します。
 虹は陽光と水でできます。そういえば子どもの頃、ホースの先を指先でつぶし、陽光のなかで水をまいて小さな虹を作るのが好きでした。不思議とか思う前に、ただじっと見入っていました。
 大きな虹はたくさんの人が見ることができます。ただし気がついていれば、です。予感がして飛び出して、という人はあまりいないでしょうから、偶然に出会うことが多いと思います。
 それにしてもあの虹の7色、何かを伝えるための言葉のように思えて仕方がありません。今は携帯電話を初め、電波が伝えるものは数え切れません。虹も波長です。きっと誰かが伝えたいメッセージを色の波長に託したのかもしれません。さあ、何を伝えたいのでしょうか?あなたは今度虹を見かけたら、虹の言葉を受け取ってみませんか?


<第0033号 2003年10月23日(木) 本日のこびん>

      古書店

探し物は何ですか
本当に見つける気があれば
その気になれば見つかるよ
ここは
町全体が古書店だから


   * 挿一輪 *
 今はインターネットで何でも検索できます。でも検索する時はキーワードを入れます。ある一定の条件の下、絞り込むのにはとても便利にできています。
 でも別の探し方がしたい場合があります。特にキーワードがなく、何か特定の感情で探す時です。目が探すのではなく、頭が探すのとも少し違う、まるで体そのものが、相性のように一定の環境を探す、「目的」ではなく、「出会い」なのかもしれません。
 そうなると抽出する検索ではなく、漠然とした一つのかたまり=マスでとらえる形がぴったりです。何のことはない、古書店巡りみたいなものです。何かここあたりにありそうな気がする。欲しいものは必ず探せばある。作者も題名も内容すらも分からないで、でも見つかる。なかったら?次の古書店に行けばいい。
 で、町全体が古書店だったら、もうすごいですね。自分に一番合うものを探して、その町に住み込んでしまう。いつか必ず見つかる、そう、あなたもそんな町に行って、一緒に何かを探しませんか。


<第0032号 2003年10月19日(日) 本日のこびん>

      自転車

君のひとこぎで
車輪が回る

君のひとことで
さっきまで忘れていた
こころが回る


   * 挿一輪 *
 自転車は考えてみると素敵な乗り物です。自分がこいだ分だけ前に進みます。確かに歯車の関係で効率的にはなっていますが、こがなければ押してゆかないかぎり動きません。意志が動力に変わり、初めて前に進めます。
 ふだんでも、ささいなことで動くことがあります。何気なくかけられた言葉です。何かの拍子になくした平常心や、迷い込んだ道から出る手がかりを、見つけられます。
 きっかけはどこにでもあります。ただ気がつかないだけです。でもじっと待っているだけではだめです。自転車も最初にこがなければ動きません。あなたの行動が軌道に乗るのも乗らないのも、最初の一歩がかんじんです。
 さあ、小さなきっかけをもとにして、楽しい旅を始めませんか?


<第0031号 2003年10月16日(木) 本日のこびん>

      立詩

花を立てるように
詩を立てる

素材はふと目をとめたもの
足下の雑草でもいい
おぼろげな話し言葉でもいい


   * 挿一輪 *
 花を活けることを立花というそうです。辞書を引くと、「中心に立てる花」と出ています。それにちなんで詩を作ることを立詩と呼んでいます。造語です。
 素材を選び、中心を決めてひとつの世界を表現してゆく。花も言葉も同じ生きている素材です。どうやって、今ここにある素材を生かし作り上げてゆくか。分からなくなったらじっと見て、素材に教えてもらいます。でもなかなか思ったとおりにはいきません。いつまでたっても半人前のままに思えます。ひたすら作ってゆくしかないのです。
 楽しい時も、苦しい時も、嫌になることもあります。でも続けています。今は良かったと思っています。何かの時に自分を支えてくれることがあるからです。
 何かひとつでも続けていることがあるといいですね。あなたも何か続けているものはありますか?


<第0030号 2003年10月12日(日) 本日のこびん>

      ひたむき

ひたむき
ひたむき
忘れてはいけない

自分が
ひたむきにできることなら
つまらないことはない
みにならないことはない


   * 挿一輪 *
 ひたむきになれる時っていつですか?自分が好きなことに集中している時ですか?それともこれだけはやらなくてはいけないと追いつめられている時ですか?
 時間が等間隔に進んでいるとは思えないくらい、あっという間に数時間が過ぎて、気がついたら夜!いや朝!そんな経験は、誰もが持っているように思います。別人のようになりますね。いつもはダラーッとしているのに(すいません、私のことです)、いざとなると鬼のごとく駆け抜けてゆく。残るのは、一陣の風と疲労と充実感。でも必ずそれは、その後の自分に何かを与えてくれるような気がします。
 あなたがひたむきになる時は、いったいどんな時ですか?その時のあなたを、決して嫌ったり忘れたりしないでくださいね。


<第0029号 2003年10月9日(木) 本日のこびん>

      うたいな

いつか
うたいきったと思うまで
自分が納得できるまで
ひたすらに
ごまかさずに
生きている今の自分をうたいな


   * 挿一輪 *
 自分をうたえたらいいですね。表現の形は何でもかまいません。自分に一番あった方法を見つけて、自分自身をうたうのです。音楽でも言葉でも作ることでも仕事でもかまいません。
 ただ、決して手を抜かないで、自分一杯でうたうのです。その判定は、自分が納得できるか否かです。他人に判定をゆだねてはいけません。なぜなら他人はごまかせても、自分は決してごまかせないからです。
 厳しいかもしれません。けれどその真摯な生き方が、必ず何かをもたらしてくれるような気がします。あなたが納得できる自分とは、どういうものなのか、めいっぱいのあなたにトライしてみませんか?


<第0028号 2003年10月5日(日) 本日のこびん>

      夜の自転車屋

とても明るいのは
自転車屋の前だけ

暗がりからいろいろな姿が飛び込んで
まばたきするように去ってゆく

生きている毎日とは
そういうものの繰り返しだというように


   * 挿一輪 *
 暗い道を歩いていたら一軒だけ明るい店先がありました。自転車屋さんでした。見ていると、暗がりから自転車が走ってきて、店先を通り抜けて行きます。その一瞬だけスポットライトを浴びたように、自転車も乗っている人もまぶしいほどに光ります。
 生きている日常の中で、この一瞬、すなわち「今」はスポットライトを浴びた瞬間の姿です。例えそこに、自分の故郷のような安らぎがあったとしても、止まることなく時間は流れています。でもその一瞬の輝きがあるからこそ、また次の光を求めて走ってゆけます。
 あなたも光る小さな店先で、あなたの姿を見つけることができますか?


<第0027号 2003年10月2日(木) 本日のこびん>

      海の記憶

忘れていただけかもしれない
ずっと
鳴り続けていただけなのかもしれない

潮騒
松に風のわたる音
砂の動く音


   * 挿一輪 *
 幼稚園は松林に続いていました。松林の向こうは広い砂浜。砂浜の向こうは海!今から40年も前の話です。今はめったに海に行くことはありません。先週、久しぶりに海に行ってきました。9月の終わりの海は人も少なく、ずっと波消しテトラの上に座って、海を体中で感じてきました。
 砂浜には高速道路ができました。あの幼稚園からもまっすぐには海に行けません。砂浜も衰退して、人工物でかろうじて守られている状態です。でも、この音、この風、この匂い。考えてみれば海はずっと波を繰り返し、打ち上げていたんです。同じように私の中にも繰り返し、私の波が打ち上げ続けた気がします。海に来るとそれがすぐに同調するのです。どんなに間があいて忘れていても。
 あなたの記憶の中にも、ずっと鳴り続けていて、ただ忘れているだけの音はありませんか?何かの拍子にふっと同調し、思い出すかもしれませんね。



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