2005年7月のこびん

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<第0218号 2005年7月31日(日)>

       すくう

         小さな両手の
         合わせたてのひらの分だけ
         そっとこぼさずに
         すくう
         
         だれがみていなくても
         だれも知らなくても
         めんどうがらずに
         すくう
         
         いそがずゆっくり
         ただもくもくと
         すくう
         
         わたし自身のてのひらで
         すくう
         今日一日の
         生きたわたしそのままを
         すくう


   * 挿一輪 *

 あなたの両手をつけて、水をすくってみてください。
 すくった水を器に移すと。
 
 指のすきまから水がこぼれ、
 残っているのは、てのひらの窪みの部分だけ。
 
 器をいっぱいにするのは大変です。
 でも、そこでやめてしまえば、いつまでも水はたまりません。
 
 少しずつでも、てのひらの大きさの分だけ、ためてゆく。
 それは、あなたが身につけた、今日一日の糧です。
 
 あなたのペースで、あなたのために、あなた自身をためてゆく。
 
 てのひらの大きさに大小はあっても、それほどの違いはありません。
 すくい続けることが大切です。
 
 いつか器いっぱいで、あふれるくらいになったとき、
 あなたは、たしかな財産を手に入れるはずです。


<第0217号 2005年7月28日(木)>

       前夜

         明日という日が
         待ち遠しいときがある
         明日という日が
         来て欲しくないときもある
         
         前夜
         いつもの枕が少し違う
         いつもの時計の進みが少し違う
         
         でも
         けっして変わらないことがある
         けっしてなくならないものがある
         
         明日のために
         今日まで
         ひたすら生きてきた
         
         消えようのない
         わたしという
         事実


   * 挿一輪 *

 明日をむかえることのできる、わたし。
 それは今日を、今日までを生き抜いてきた結果です。
 
 それだけで、誇りに思ってください。
 
 たとえ、明日、どんなに大切なことをむかえようと、
 自信が、ある、なしにかかわらず、
 その誇りを胸にもって、挑戦してください。
 
 かならず、この、眠れない前夜が、
 あなた自身を応援してくれるはずですから。


 あなたの、たしかな、「生きてきた事実」、応援しています。


<第0216号 2005年7月24日(日)>

       雲の島の物語

         水平線の向こうには
         大きな雲の島
         
         オレンジ色の太陽が
         うなずくように
         包まれてゆく
         
         あの雲の島には
         いったいだれが
         住んでいるのだろう
         
         明日の朝
         昇ってきた太陽に
         こっちの島から
         聞いてみよう


   * 挿一輪 *

 大きな雲の島。
 ファンタジーではないけれど、だれかが住んでいるようです。
 
 空の人。
 竜。
 それとも、風の民。
 
 住人と交流があるのは、島を通過する太陽。
 きっと雲の島のすべてを見ているにちがいありません。
 
 ぐるっとまわって、明日の朝、また、太陽の顔を見るときに、
 きのうはどうだった?と、
 真っ先に聞いてみたいですね。
 
 そんな、ただの雲じゃないか。
 そう、思っているあなた。
 
 物語は、だれかが作ったものを読むことではありません。
 あなたが、あなたのなかに動かして、はじめて物語になります。
 
 ふと見つけた雲の島から、どんなあなたの世界が生まれるのか、
 あなた自身のオリジナルの楽しみです。


 あなたは、どんなことを聞いてみたいと思いますか?



<第0215号 2005年7月21日(木)>

       アマガエル

         プリンと小さなアマガエル
         木の葉の緑のアマガエル
         
         ゼリーの吸盤指先につけて
         水辺の葦をしっかり抱いて
         
         風が葉っぱを揺らすたび
         光る模様が背中を遊び
         
         いのち伝えるアマガエル
         梅雨明け空は夏の夢みる


   * 挿一輪 *

 アマガエルの緑色は保護色です。
 草むらや葉陰にいると、なかなか見つかりません。
 
 がさっと音がした拍子に、出会うことがあります。
 風が葉を揺らして、背中が光って出会うこともあります。
 
 梅雨があけて、空は夏空です。
 アマガエルは小さいからだを、いのちいっぱいにして生きています。
 
 明日はどうなるかはわかりません。
 今日を、いえ、この「たったいま」を、
 ひたすら、生き抜いているだけです。
 
 いちばんたしかなもの。
 それは、生きているいのち、そのものなのだと思いませんか?


<第0214号 2005年7月17日(日)>

       風

         わたしの風を
         待つ
         わたしの風が
         生まれる
         
         わたしは
         風に
         なった
         
         呼ばれるまで
         どれだけのあいだ
         わたしは待っていたのだろう
         どれだけのあいだ
         わたしは待たれていたのだろう
         
         そして
         どれだけのあいだ
         わたしは吹き続けるのだろう
         
         生まれてから消えるまで


   * 挿一輪 *

 気がつくと、風が吹いています。
 気がつくと、わたしが生きています。
 
 たしかに、生まれた瞬間があるはずです。
 でも、自分では思い出せません。
 
 風の母親は見ています。
 きっと、
 わたしの母親も同じです。
 
 生まれて、風になり、
 生まれて、わたしになりました。
 
 長いあいだ、ずっと待って、
 長いあいだ、ずっと待たれて、
 やっと、わたしになりました。
 
 だから、
 生まれて消えるまで、
 大切に、大切に、してください。
 
 鏡に映っている、この、わたしを。


 「わたし」の、応援をしていますか?


<第0213号 2005年7月14日(木)>

       星の伝言

         星空を見上げる
         星の光を浴びる
         
         何億光年という
         旅を続けてきた光を浴びる
         
         永遠に近い旅人の伝言を
         こうして受けていいのだろうか
         
         はるか彼方の星の上の
         ちっぽけなわたしでいいのだろうか
         
         ありがとう
         からだいっぱいで受け取るから
         
         ありがとう
         あるがままを受け入れるから


   * 挿一輪 *

 もしかしたら、
 いま見ている星は、もうないのかもしれません。
 
 いのちを終えた星の、最後の光だけが、
 暗闇の宇宙空間を、旅しているのかもしれません。
 
 飛び出した最後の光。
 飛び出した最後の伝言。
 
 たしかに。
 伝えたよ。
 
 「受け取る」とは、
 ただ、あるがままを、受け入れるだけのことかもしれません。
 
 
 星の光を見るように、毎日を受け取ること、できますか?


<第0212号 2005年7月10日(日)>

       天秤

         てのひらの上に
         乗せて
         小石の重さをはかる
         
         こころのなかに
         入れて
         ことばの重さをはかる
         
         受け取ることばの
         伝わることばの
         わずかな違い
         
         いつもたしかに感じている
         
         あなたのなかの
         感受性という名の
         透明な天秤


   * 挿一輪 *

 微妙なバランスで成り立っています、
 人のからだもこころも。
 
 わずかなことで大きく傾きます。
 バランスを崩します。
 
 ことばには重みがないようで、
 こころでしかはかることができない、重さがあります。
 
 そのことを少しでもわかっていれば、
 だれかを傷つけずにすみます。
 
 
 あなたのこころの見えない天秤、
 わずかな動きに反応するように、
 いつもメンテナンスをしていますか?


<第0211号 2005年7月7日(木)>

       願い

         七夕の短冊に
         わたしの名前を書く
         
         願いをこめて
         わたしの名前を書く
         
         この名前にこめられた願いを
         この名前に託された願いを
         
         生まれたことへの感謝をこめて
         生きることへの誓いをこめて
         
         きょう この短冊に
         わたし自身の名前を書く


   * 挿一輪 *

 七夕の短冊には願いを書きます。
 可愛い願いから、壮大な夢の計画まで。
 
 でも、わたしにとって、いちばん大きな願いは、
 わたしの名前にこめられた、たったひとつの生き方をすること。
 
 生まれたときにつけられた名前。
 その名前には、大きな願いがこめられています。
 
 生まれたからには、わたしにこめられた願いをかなえたい。
 いちばん大きな願い。
 わたしの、わたしだけの、わたしにしかできない生き方。
 
 そのために、生まれた。
 
 
 いちばん身近で、いちばん大切な願い。
 短冊に、願いとして、
 あなた自身の名前を、大きく書いてみませんか。


<第0210号 2005年7月3日(日)>

       風のことば

         風がやってくる
         波のうねりようにやってくる
         
         なにかが聞ける
         なにかが伝えられる
         
         わたしは飛び出した
         風の道に飛び出した
         
         風に乗ったことばが
         風に抱かれたことばが
         わたしに当たって音をたてる
         
         見ているだけでは
         わたしの音は出ないから
         風のことばは聞けないから
         
         風がやってくる
         からだのなかからも吹いてくる


   * 挿一輪 *

 風の音。
 風が出会ったもののことばを、伝えてくれます。
 
 樹や水や建物や・・・。
 人間に出会ったなら、なにを伝えてゆくのでしょうか。
 
 
 風のことば、風のなかに飛び出して、聞いてみませんか?



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