2005年8月のこびん

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<第0226号 2005年8月28日(日)>

       ふたつの世界

         ひとつのものと
         ひとつのものが
         別々にいるよりは
         
         たとえ多くなったとしても
         たとえ少なくなったとしても
         ふたつ一緒になってみたい
         
         ひとりでひとつの世界に浸るより
         ふたりでふたつの世界を見るほうが
         
         ワクワク
         ドキドキ
         楽しめるから


   * 挿一輪 *

 ひとりは気楽です。
 自分のことはわかるし、だれかに振りまわされることもない。
 予測もつきますし、思い通りに行動できます。
 
 ふたりになると、制約ができてきます。
 それぞれ、作り上げた世界があり、摩擦もおこります。
 
 その一方で、可能性も広がります。
 ひとりのときに気付かなかった、新しい世界が見えてきます。
 
 1+1は、2になることはまれです。
 ときには、3や4、いえ、もっと10にもなり、
 ときには、0やマイナスになるかもしれません。
 
 リスクがあるからイヤ。
 ひとりの世界が居心地がいい。
 
 でも、だれでも、ワクワク、ドキドキが好きなものです。
 新しい世界を体験したいのなら、
 わたしの世界のとびらを、開放してみませんか。
 
 きっと、新しい風がお互いに吹き込んで、
 広々とした世界を、探検することができるはずです。


<第0225号 2005年8月25日(木)>

       こおろぎの木

         小さな木だけれど
         みんな立ち止まる
         
         昼間は通り過ぎるけれど
         夜になると立ち止まる
         
         まるで葉の一枚一枚
         まるで枝の一本一本
         澄んだ声で歌い続ける
         
         立ち止まり
         しばらく耳をかたむけ
         なにかを思い出したように
         家路に向かう
         
         大切な時間を胸に満たして
         大切な人のもとへ帰る


   * 挿一輪 *

 せみが好む木には、せみが集まり、蝉時雨(せみしぐれ)になります。
 
 こおろぎは、草むらが好みのように思いますが、
 時々、蝉時雨のように、木全体が涼しい音色で包まれることがあります。
 
 なにかを祈るかのように、また歌うように、鳴き続けるこおろぎ。
 木の前で思わず立ち止まり、聞き入ります。
 
 こころのなかが澄みきったころ、忍び込むように入るもの。
 ふだん置き忘れていた、わたしの大切な時間。
 そんなわたしを待っている、大切な人たち。
 
 こおろぎの声が、思い出させてくれたようです。
 
 あなたの澄みきったこころをおみやげにして、
 待っている、あの人のもとへ、帰りましょうか。


<第0224号 2005年8月21日(日)>

       なく

         鳥が鳴く
         たそがれて
         こおろぎが鳴く
         
         赤ん坊が泣く
         夕飯の匂いが満ちて
         ネコが鳴く
         
         声を出せるものはいいねと
         見上げるようなクスノキが
         うらやましがるものだから
         
         はるか山の向こうから風が呼ばれて
         ほらひと吹き
         大きく樹をゆすった
         
         うれしそうに
         クスノキが啼く


   * 挿一輪 *

 なく、って、伝えることでしょう。
 ないて、伝えます。
 
 なけないときは、どうしますか。
 伝えたいものがいっぱいあっても、伝えられないときはどうしますか。
 
 
 どうにかして伝えたい。
 
 なけないもの、声を出せないもの、じっと待つしかないもの。
 いっぱいあります。
 気がついてくれない、って、哀しいです。
 
 
 わたしには、声があります。
 わたしには、なくことが、叫ぶことができます。
 そして、
 わたしには、伝えることができます。
 
 
 あなただって、同じです。
 それだけで、すごいことだと、思いませんか。
 
 使わないで、下を向いていることなんて。
 ・・・ないですよね?


<第0223号 2005年8月18日(木)>

       伝書鳩

         澄みきった涼しさの青に
         大きく円を描くのは
         伝書鳩の群れ
         
         わたしが角から角まで
         うつむいて歩いていたあいだ
         鮮やかな幾何模様の軌跡は
         いったい何回ひかれたことだろう
         
         落し物を探しているより
         顔を上げてこの空においで
         
         風の海を泳いでいるだけで
         からだのすみずみまで
         ちからが満ちるから
         
         見上げるものに
         ちからのしずくを届けてまわれ
         
         飛べ 伝書鳩よ


   * 挿一輪 *

 早朝、伝書鳩の群れが、気持ち良さそうに旋回しています。
 リーダーを先頭に、飛行の訓練をしています。
 
 いまでは、見かけることが少なくなりましたが、
 自宅の周りと、職場近くの周りで、よく見かけます。
 
 通信手段はより高速になっていますが、
 災害時の通信手段など、まだまだ、伝書鳩の活躍の場はありそうです。
 
 なんといっても、
 ちからいっぱい羽ばたいている、その姿を見ていると、
 下をうつむいて悩んでいる自分が、恥ずかしくなります。
 
 いっしょに、大空を飛びたいですね。
 そして、自分の気持ちを、大切なあのひとに伝えたいですね。


<第0222号 2005年8月14日(日)>

       ひとやすみ

         どこかで雨が降りはじめ
         雨の匂いが届けられ
         
         どこかで花が咲きはじめ
         花の香りが届けられ
         
         ふと 立ち止まるひとがいる
         
         ゆめをみつけた知らせには
         つけた仮面を忘れさせ
         
         ふるさと色の思い出は
         ことばの化粧を忘れさせ
         
         しばし たたずむときがある


   * 挿一輪 *

 ふと、立ち止まるとき、ありませんか。
 
 思いつめていたときに、
 そっと肩に置かれた手のような、やさしさ。
 張り詰めていたものが、
 そっと包み込まれたような、なつかしさ。
 
 いつもと違う、なにかを感じたなら、
 ひとやすみ、しませんか。
 
 素顔の自分にもどって、
 しばらく、たたずんでみませんか。
 
 また、立ち上がって、歩き始めるまで。


<第0221号 2005年8月11日(木)>

       聞く

         夏の朝
         咲いたばかりのアサガオに
         耳を寄せる
         
         きのうまで
         つぼみに はぐくんでいた
         ことばを聞く
         
         色を見るのではなく
         匂いをかぐのではなく
         
         たったいま
         開いたばかりの
         
         いのちのことばを
         聞く


   * 挿一輪 *

 きのうまで、ねじりん棒のつぼみでした。
 朝起きてみると、開いたばかりのアサガオ。
 
 長い時間をかけて、つぼみを作ったと思ったら、
 もう、いましかないと、開きました。
 
 アサガオのつぼみのなかには、なにが、はぐくまれていたのでしょうか。
 大地から、雨から、風から、太陽から。
 もらい、育て、花が開いたとき。
 
 あなたは、その花に耳を当てて、聞いてみてください。
 ずっと、はぐくまれてきた、いのちのことばを。
 
 あなたと同じ、生きていることばを。


<第0220号 2005年8月7日(日)>

       あなたへのラブレター

         あなたが好きです
         と
         ラブレターを書いてみる
         
         あなたはかたわらの花でもいい
         あなたは雲が浮かぶ空でもいい
         あなたは忘れることのない夢でもいい
         
         でも
         目をじっと閉じて浮かぶ
         あのときのあなた自身がいい
         
         たったそれだけのことで
         
         あのときこぼせなかった涙が流れ
         あのとき許せなかったこだわりがほぐれ
         あのとき託せなかった想いが開く
         
         そんなあなたが大好きです
         と
         ラブレターを書いてみる


   * 挿一輪 *

 手紙を書くのは勇気がいります。
 ましてラブレターは、なおさら。
 
 思っているだけならごまかせる、あやふやな気持ちを、
 目に見えることばで書くからでしょう。
 
 こころの奥にしまったままの、出会いたくないあのときのあなた。
 いっそ、そんなあなたをいとおしんで、
 あの頃のあなた自身に、ラブレターを書いてみたら。
 
 
 辛かったけれど
 苦しかったけれど
 そんなありのままのあなたが好きです
 
 
 かけがえのないあなたに、いつも恋してあげてくださいね。


<第0219号 2005年8月4日(木)>

       空を忘れているときに

         空を忘れているときに
         ふと見る空の
         さわやかさ
         
         ゆめを忘れているときに
         ふと飛ぶゆめの
         あざやかさ
         
         あなたを忘れているときに
         ふと会うあなたの
         あたたかさ
         
         わたしをなくしているときに
         ふと呼ぶなまえの
         なつかしさ


   * 挿一輪 *

 みんな忘れてしまった。
 なにもかもなくしてしまった。
 
 なにも悪いことなどしていないのに。
 どこでリズムが狂ってしまったの。
 
 
 少し休もう。
 呼吸を整えよう。
 腰をおろして、ゆっくりと息を吐いて、吐きつくして。
 
 なにもかもなくしてしまったなんて、そんなことない。
 いつまでも、下を向き続けることはできないから。
 ほら、気配を感じない?
 
 
 あなたが、ふと顔を上げてみると。
 
 みんな待っている。
 みんな心配して待っている。
 
 ね、ここにずっといたんだよ、って。
 ね、ひとりじゃなかったんだよ、って。
 
 
 ほら、思い出したでしょう。



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