2006年1月のこびん

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<第0270号 2006年1月29日(日)>

       風の船

         風の船と名前のついたころ
         風船は
         
         もっともっと
         大きかったにちがいない
         
         もっともっと
         夢を乗せたにちがいない
         
         青く澄んだ
         空そのものの大きさの
         風の船だったにちがいない


   * 挿一輪 *

 むかし、爬虫類が大きくて、恐竜と呼ばれたように。
 風船も、空のように、大きかったのかもしれません。
 
 なんでも、そのまま運べてしまいそうなので、
 どこでも、わずかな風で運べてしまいそうなので、
 風の船と、名付けられたのかもしれません。
 
 いまでも、大きな気球はありますが、
 風の船の方が、ぴったりした名前だとは思いませんか?
 
 風船を、高く高く飛ばすとき、
 思わず、何かを伝えたくなります。
 
 あなたに、届け。
 想いよ、届け。
 
 いまは、小さくなってしまった風船ですけれど、
 もし、空と同じ大きさならば、
 どんな大きなものを、運んでほしいですか?
 
 同じように空を見上げている、たくさんのいのちたちに、
 何を伝えてほしいですか?
 
 こころは、はかりしれない大きさと深さがあります。
 
 たとえ、空のように大きな船でも、
 乗せきれないものが、あるかもしれませんね。


<第0269号 2006年1月26日(木)>

       伝えたい

         冬の陽だまり
         そのままを
         おきかえる
         ことばに
         
         カメラもない
         レコーダーもない
         
         あるのは
         目と耳と
         あなたに伝えたい
         ただそれだけの
         気持ち


   * 挿一輪 *

 ふと、このまま取っておきたいと、思うことがあります。
 
 冬のやわらかな陽だまり。
 雪解けの氷の先の光。
 染み込むような淡い影。
 
 落ち葉のすれる音。
 風の伝言。
 さえずるような声。
 
 あいにく、カメラもないし、録音するレコーダーもありません。
 
 でも、この瞬間を、とっておきたい。
 それ以上に、この瞬間を、だれかに伝えたい。
 
 その場の空気をまるごと、こころのバッグにつめて、持ち帰りたい。
 持ち帰ったものを、伝えたい人の前に、そっと差し出して。
 
 あたかも、自分が感じたかのように、
 再現するのにはどうしたらいいでしょうか?
 
 ことばがあります。
 絵があります。
 音楽があります。
 
 まるで違う形に変換して、見たままの空気そのままを、
 もっと強く、感じた自分のこころを表現することを、
 あなたはできます。
 
 ことばが浮かばない、絵が下手、楽器もだめ?
 才能がないから、できないから。
 
 伝わらなくていいですか?
 どうしてでも、伝えようと思いませんか?
 
 たとえ、拙くても、不器用でも、
 自分のいまできること、すべてを総動員して、
 あなたの気持ちを、伝えてみませんか?


<第0268号 2006年1月22日(日)>

       指先

         指先じっと
         毛細血管
         見えてきた
         
         指先どくんと
         毛細血管
         聞こえてきた
         
         ながれている
         うごいている
         
         気がつかなくても
         止まらないことの
         たいせつさ


   * 挿一輪 *

 ふと、指先を見ていたら、これはなに?
 お風呂上りのことなので、汚れではありません。
 
 よく見ると、線のようにつながっています。
 毛細血管。
 全身に張り巡らされている、血液の通り道です。
 
 ふだんは、気にもしていません。
 ちょっと指先を切ったりしたら、血が出ることもありますが、
 けがをしたと思っても、血管のことまで考えません。
 
 当の本人さえ気がつかないのに、血液は全身を止まることなく巡ります。
 そのつど、からだの調子を判断して、最良の状態を保ちます。
 
 いちいち、聞かれても困ります。
 多く、流しますか?
 少し、しぼりますか?
 ちょっと、休んでいいですか?
 
 わたしたちのからだをはじめ、
 気がつかなくても、動き続けていることがたくさんあります。
 
 樹や草や花。
 動物や昆虫や微生物。
 そのいのちたちを育み守る、空気や水。
 
 そして、すべてをまるごと乗せている、この青く美しい星。
 
 いちばん大切なものほど、ふだん気がつかずに動き続けています。
 いつもは、まかせてもいいですが、
 決して、そのことを忘れないでください。
 
 ふと、まわりをみまわしてください。
 あなたにとって、気がつかずに動いてくれるもの。
 あなたにとって、気がつかずに支えてくれるもの。
 
 もしも、止まってしまったなら、どうしますか?
 なくさずに守ってゆくのには、どうしたらいいですか?
 
 大切なものは、いくつ見つかりましか?


<第0267号 2006年1月19日(木)>

       風花

         ぬれている
         子犬の黒い鼻
         小さな陽だまり
         
         閉じこめられた
         一月のゆめ
         うすらひの気泡
         
         どこからともなく
         かざはなの巡礼
         母さんはどこ
         
         はじけたポップコーン
         見上げれば
         黄梅


   * 挿一輪 *

 晴れていても、雪が舞うことがあります。
 いったいどこから、やってきたのでしょうか?
 
 積もることもなく、どこへゆくのでもなく。
 雪の好きな子どもたちも、気遣うようにてのひらを差し出します。
 
 母のぬくもりに触れたように、ほっとしたように止まり、
 雪は、静かに溶けてゆく。
 
 風花は、切ないほど、はかない雪の花です。
 
 
 薄く張った氷、うすらひも、小さな気泡を閉じ込めています。
 
 触れたらすぐに割れてしまい、
 待ち続けた春へのゆめが、すり抜けて空へと昇ってゆきます。
 
 
 ふと、どこかで、ポップコーンがはじけたように、
 なにかが飛び込んできました。
 
 頭上の枝に、黄色の梅、今年初めての、黄梅です。
 子犬も、黒い鼻を、くんと鳴らしています。
 
 
 冬は、色彩の乏しい季節です。
 
 でも、それだけに、ひっそりと息づくような、
 はかないできごとに、胸がさわぎます。
 
 あなたも、そんなささやかな出会いを、みつけてみませんか?
 少しでも、こころがあたたかくなりますように。


<第0266号 2006年1月15日(日)>

       子犬

         子犬の目は
         やわらかな三角だ
         
         子犬の垂れた耳も
         やわらかな三角だ
         
         そんな小さな三角たちが
         枯れ草のなかから呼んでいる
         
         風が止まった
         しんとした陽だまり
         
         切り裂くようにもずが鳴いて
         小さな三角たちが
         空に跳ねた


   * 挿一輪 *

 低い姿勢から空を見上げると、こんなにも高く見えます。
 静まりかえった空間なら、たとえ小さな音でも、とびあがります。
 
 子犬にとって、見るものすべて、大きく、
 そして、冒険に満ちているに、違いありません。
 
 三角の目も耳も、すぐに反応します。
 影が揺れれば、こわがり、
 枯れ葉が走れば、追いかけます。
 
 
 ふだん、気にもとめないような、小さなできごとも、
 子犬と一緒にいると、新鮮に映ります。
 
 人間の子どもだって同じです。
 いえいえ、ひとごとのようにいいますが、
 わたしだって、そうでした。
 
 あなただって、地面に落ちていた石や小枝で、
 暗くなるのも気がつかないほど、
 夢中になって、遊んでいたはずです。
 
 でも、いまは、偶然に石をけってしまっても、
 気にもとめないかもしれません。
 
 建物の影が暗い舗道から、光のさす陽だまりに出ても、
 まぶしさに、顔をしかめるだけかもしれません。
 
 
 風が吹いても、季節の匂いを感じなくなって、
 子どもは、たくさんのものを捨てて、
 立派な大人になれると、信じてきました。
 
 子犬の小さな三角も、すぐに鋭い感覚を学ぶはずです。
 でも、その無邪気なしぐさは、
 いつまでも、子犬の気持ちを、持ち続けているような気がします。
 
 
 たまには、無心に子犬とじゃれてみませんか?
 かならず、しゃがんだ姿勢になりますから。
 
 そして、見上げてみてください、高い空を。



<第0265号 2006年1月12日(木)>

       伝えるありがとう

         いくつものありがとう
         ひとつひとつ書き出して
         そっとあなたに
         文字で伝える
         
         いくつものありがとう
         思いを伝えるだけで十分だけれど
         たしかにこうして
         残しておきたい
         
         ほんとうの
         まっすぐの
         わすれない
         
         二人のための
         ありがとう
         だから


   * 挿一輪 *

 ありがとう、は、こころで伝えるものですか?
 口にしなくても、文字にしなくても、
 気持ちがあれば伝わると、思っていますか?
 
 面と向かっての、ありがとう。
 文字に残しての、ありがとう。
 
 照れくさかったり、何を今さらと強がったり。
 
 ありがとう、を告げる人も、ありがとう、を受け取る人も、
 実は、とっても勇気がいることだからです。
 
 でも、ほんとうに、ありがとう、を伝えたいのなら、
 思わず、ことばで、ありがとう、が出ると思います。
 
 走り書きでもかまいません。
 伝言でもかまいません。
 
 形にして残す、ありがとう。
 
 その気持ちを、まっすぐに伝えたいのなら、
 いちばんステキな、伝え方だと思いませんか?


<第0264号 2006年1月8日(日)>

       だるま

         目を入れる
         風が来る
         だっこすると
         子犬のように
         あたたかい


   * 挿一輪 *

 だるまに目を入れたことはありますか?
 
 願いごとを思って、片目に目を入れます。
 願いごとをかなえ、もう片方の目を入れる日を思って。
 
 風が吹きます。
 
 目を通して、
 だるまのなかの空間と、周りの世界とがつながるのでしょうか。
 
 まるで、目を見つめあうことで、お互いの意思が通じ合うように。
 
 目を入れるときに、だるまを抱きかかえたことがあります。
 不思議なぬくもりを感じました。
 
 あたたかいのです。
 
 このあたたかさは、どこかで感じたもの。
 そういえば、子犬を抱いたときの感じに似ている?
 
 だるまのなかに入った願いが、もたらしたあたたかさなのでしょうか。
 
 願いを育てるのは、
 なつかしいような、そのあたたかさが、必要なのかもしれませんね。



<第0263号 2006年1月5日(木)>

       初夢

         星は瞳なんだよ
         だれかがいったんだ
         
         まばたきもするんだよ
         だれかがいったんだ
         
         ずっと遠くからやってくるから
         あまりにも遠くからやってくるから
         
         振り返ってみると
         ふるさとがないことがあるんだよ
         
         かなしいねっていったら
         ふるさとを
         ひとかけらもっているから
         だいじょうぶだよって
         
         流れ星のような初夢


   * 挿一輪 *

 初夢は見ましたか?
 夢は、正夢とも、逆夢とも、いいますが、
 良い夢でしたか?
 怖い夢でしたか?
 
 夢は、その日の一日のできごとを、
 脳が整理するときに、浮かぶ映像だそうです。
 
 良い一日をすごして、気持ちよく寝付ければ、
 良い夢が、見られるのでしょうか?
 
 なにか、自分の思いとは別の行動をしてしまうと、
 悔いが残って、悲しい夢を見てしまうのでしょうか?
 
 一日を、風のように走り抜けるわたしたち。
 その夢も、だんだん、はかなくなってきます。
 
 ゆったりとした、あたたかな夢を、見てみたいですね。


<第0262号 2006年1月1日(日)>

       祝いことば

         あたらしい年の初めに
         けっしんすることは
         まっすぐに生きること
         しあわせをもとめて
         ていねいに生きること
         
         おおぞらのようなゆめには
         めでるように輝く太陽
         できるかぎりのほんとうを
         とことん追い続けてゆけるなら
         うたをうたえるあなただけのうたを


   * 挿一輪 *

 元旦に、一年の目標を立てますか?
 その目標は、あなたのゆめにつながることですか?
 
 今までに考えたこともない、新しいことですか?
 今までに続けたことを、パワーアップすることですか?
 
 どんな目標でもかまいません。
 ささやかなことでもかまいません。
 
 あなただけにできる目標をたててください。
 続けてできる目標をたててください。
 
 目で耳でこころで、確認できる目標をたててください。
 どんな形でも確かめられると、前に進むことがわかるからです。
 
 できるなら、何年も続ける長期の目標と、
 すぐにできそうな目標を、組み合わせてみてください。
 
 あとは、まっすぐに、ていねいに。
 あなたの力で、コツコツと。
 そして、楽しんでください。
 
 たのしさを作り出すのは、あなた自身なのですから。
 しあわせを作り出すのは、あなた自身なのですから。




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