2006年3月のこびん

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<第0287号 2006年3月30日(木)>

       なにか

         「なにか」では
         先に進めない
         
         「なにか」では
         行き先がわからない
         
         「なにか」では
         かなえてあげようとしても
         
         「なにか」では
         困ってしまう
         ゆめのかみさま


   * 挿一輪 *

 なにかが、あるはずだから。
 なにかを、もとめてゆく。
 
 具体的なことが出てこないで、
 だいたいのイメージだけ浮かんでいる。
 
 こんなことが、ありませんか?
 
 この仕事、どうも合わないんだよね。
 なにか、いい仕事があるはず。
 
 あの人、どこか違うんだよね。
 なにか、ステキな出会いないかな。
 
 その、なにか、って、なに?
 
 つきつめてゆけば、
 確かなものは、なにも出てこないのに気がつきます。
 
 消去法です。
 現状はいやだから、なにとはいわず、
 とりあえず、現状以外のもの。
 
 方向性がないので、
 次の一歩が、踏み出せません。
 
 合わないというのは、仕方がないことです。
 やってみて、失敗することも、仕方がないことです。
 
 でも、
 それなら、
 自分の求める姿は、なんでしょうか?
 
 その形が、はっきりと決まらない限り、
 同じところを、うろうろと廻っているだけ。
 
 たとえ、ゆめの神様が、
 あなたのゆめを、かなえてあげようと、
 すぐそばまで来ていても、
 なにが欲しいのかが、わからないと、
 頭を抱えてしまいます。
 
 
 ゆめをかなえる人。
 それは、
 ゆめの形が決まっている人です。
 
 まず、
 しっかりと、
 なにか、を、具体的に、決めてください。
 決めたら、まっすぐに、行き先にむかって歩いてください。
 
 歩き始めたら、
 神様は、あわてて、あとを追いかけてきます。
 
 案外、神様より前に、
 あなたのほうが、先に、
 ゆめに、着いているかもしれませんよ。



<第0286号 2006年3月26日(日)>

       忘れもの

         忘れものは
         忘れてしまっても
         
         忘れものは
         なくならない
         
         いつまでも
         いつまでも
         
         あなたが
         思い出して
         戻ってくるのを
         待っている


   * 挿一輪 *

 忘れ物は、忘れられています。
 
 電車の中での、カサの置き忘れ。
 あとで気がついたら、取りにゆきます。
 
 忘れたことも、忘れてしまったから、
 いつまでも、引き取り手のない忘れものです。
 
 
 カサなら、また買えるかもしれません。
 でも、二度と手に入らない大切なもの、
 忘れてしまったことは、ありませんか。
 
 
 毎日の生活のなかで、
 忘れてしまったもの、たくさんあります。
 
 1、小さな疑問。
 2、ささやかな気配り。
 3、ふとした出会い。
 
 1、そうか、聞いたことがある、分かった、簡単だよ。
 2、あ、ありがとう、気持ちで伝えるね。
 3、こんなステキなことが、ふうん。
 
 その時に、
 一瞬、止まりかけても、
 なにか忙しいもののせいにして、通り過ぎてしまいます。
 
 1、だれかに、どこかで、聞いたことがある?
  ほんとうに、自分で、「分かって」いますか?
 
 2、気持ちを伝えるのに、ひとことがめんどうくさい?
  「ありがとう」のひとことに、何秒かかりますか?
 
 3、ステキなことって、通り過ぎるTVの画面のよう?
  ステキな出会いは、あなたがいるからこそ?
 
 
 生きてゆくと、忘れものが増えてきます。
 すこしずつすこしずつ増えてきて、
 前に行く力を、相殺してしまいます。
 
 ほんとうに、強い人。
 ほんとうに、前向きで、生き生きとしている人。
 観察してください。
 
 忘れものが、少ないです。
 そのままにしないで、
 しっかりと立ち止まって、
 納得するまで、吸収するまで、気に入るまで、
 動きません。
 
 そのかわり、
 忘れものがなくなると、
 身軽に、空を飛ぶように、かけてゆきます。
 
 
 忘れることは、だれでもあります。
 でも、決して、そのままにしないでください。
 忘れものを、解決しないと、また忘れものをします。
 
 わかったつもりで、前に進むと、
 同じ問題に、いつまでもぶつかります。
 
 あなたの、忘れもの。
 いちど、整理して、少なくしてみませんか?


<第0285号 2006年3月23日(木)>

       吹き込んだとき

         あなたに
         風が吹き込んだとき
         あなたは
         どんな音をたてる
         
         あなたに
         夢が吹き込んだとき
         あなたは
         どんな香をたてる
         
         あなたに
         時が吹き込んだとき
         あなたは
         どんな今をたてる


   * 挿一輪 *

 リコーダー、知っていますか。
 小学校で、吹いたことがあると思います。
 
 息を吹き込んで、
 穴を手で押さえるだけで、
 音階が聞こえます。
 
 縦笛や横笛。
 
 和楽器なら、尺八や篠笛。
 洋楽器なら、クラリネットやフルート。
 
 素材や音の出し方は違っても、
 息を吹き込んで、音を出すのは同じです。
 
 もっとあたたかで素朴な楽器。
 オカリナ、鳩笛。
 両手を組んで息を吹き込んでも、音はなります。
 
 でも、楽器の中には何もありません。
 暗いふくらんだ空間があるだけ。
 
 
 人間も同じでしょうか。
 空気の出し入れで音が出る。
 気持ちやこころの出し入れで、
 ことばとしての音が出る。
 
 やさしい音。
 かわいい音。
 かなしい音。
 くるしい音。
 
 楽しい夢が吹き込んだときに、
 奏でる音は、
 どんな名楽器にも負けない音色が、でることでしょう。
 
 それは、香のように、
 まわりにも大きな気持ちを与えてくれます。
 
 そして、時という流れが吹き込んだとき、
 あなたは、今というものを、
 しっかりと、感じることができます。
 
 人間は楽器です。
 
 なにかが、吹き込まれたとき、
 あなたは、どんな自分を奏でますか?


<第0284号 2006年3月19日(日)>

       白蓮

         小さな
         白い
         カップ
         
         きょうは
         青い空で
         満ちている
         
         あなたの
         透明な
         カップ
         
         あしたは
         なにを
         そそぎこむ


   * 挿一輪 *

 真っ白なモクレンの花が好きです。
 
 天に向けて開く、高い樹の先の花。
 
 雲が切れて、青い空がのぞいたら、
 白いカップのひとつひとつに、
 澄んだ青い水が、注ぎ込まれて。
 
 陶器の艶の輝きのように、
 指先ではじいたら、
 澄んだ音色が聞けそうです。
 
 青い水の入る量で、
 音の高さが微妙に違い、
 光のスティックがあたるたびに、
 ハンドベルのように、音階ができそうです。
 
 
 あなたのこころのなかでも、
 もくれんの花のように、
 白いカップが開かれているかもしれません。
 
 なにを注ぎ込むかは、あなたしだい。
 
 だれかへの想い?
 秘めている夢?
 見つけたしあわせ?
 
 満たした真っ白なカップを、
 モクレンと並べて、青空に掲げて。
 
 ステキなあしたが、
 あなたの音を奏でますように。


<第0283号 2006年3月16日(木)>

       空の高さがわかるのは

         空の高さがわかるのは
         翼の生えた飛行機が
         銀の小粒に見えるとき
         
         空の高さがわかるのは
         雲の魚の側線が
         きらりと信号送るとき
         
         空の高さが知りたくて
         何度も小石を投げ上げて
         何度も声を張り上げて
         
         いまだに落ちない小石たち
         いまだに帰らぬこだまたち
         
         もうあきらめてうつむいて
         叫ぶ声もかれはてて
         
         それでもついと見上げたら
         
         空の高さがわかるのは
         わたしがこうして生きるから


   * 挿一輪 *

 どれほど空が高いのか。
 子どもの頃、測ろうとしたことはありませんか。
 
 頭のすぐ上を、
 ツバメやすずめ、小鳥が飛んでゆきます。
 
 空は、それより高いです。
 
 ずっと上を、
 とんびや渡り鳥の、大きな鳥が飛んでゆきます。
 
 空は、もっと高いです。
 
 光る粒のように、
 はるか上を、飛行機が飛んでゆきます。
 
 まだまだ、もっと上です。
 
 小石を投げても、声をはりあげても、届きません。
 最後には、疲れて、ひっくり返って、寝そべって。
 
 なおさら、空の高さを感じます。
 
 
 あの頃、自分はいちばん低く、高い空にあこがれていました。
 
 いつのまにか、見上げることが少なくなり、
 下を向くことが、多くなり、
 空の高さを、測ろうとすることなど、忘れてしまいました。
 
 それが、ある日。
 ふと、上を見上げたら。
 高い、高い、もっと高い、空がありました。
 
 あ、そこにいたんだね。
 ずっと、いつも、高い空はいたんだね。
 
 見上げた空は、今までのどんな空より、高かった。
 はるかに、はるかに、高かった。
 
 
 その空の高さがわかったのは、
 どんなときでも、自分を棄てずに、
 ずっと、生きてきたからです。
 
 空の高さがわかるのは、
 あなたが、自分自身を生き続けること。
 ただそれだけで、
 いつかわかります、この空の高さが。
 
 空の高さがわかるのは・・・。


<第0282号 2006年3月12日(日)>

       もうひとつ

         あきらめるな
         あきらめるな
         
         辛くても
         苦しくても
         認められなくても
         
         踏みとどまって
         踏みとどまって
         もうひとつ
         踏みとどまって
         
         この一歩に
         全体重をぎりりとかけて
         決して
         あきらめるな


   * 挿一輪 *

 綱引きを、思い出してください。
 
 ほとんど同じ力で引き合って、
 一進一退の攻防が続いています。
 
 時間がたつにつれて、
 綱を握る手も痛くなり、
 ふと弱気になったとたん、
 急に相手に引きずられます。
 
 動き始めると、それを止めるには、
 均衡を保っていた力より、
 数倍の力が必要になります。
 
 まして、元の位置まで回復して、
 もっと有利に展開しようとすると、
 どのくらいの力が必要になるのでしょうか。
 
 
 その一歩を、踏みとどまることで、
 
 動き始めた力を止める。
 また元の平衡に戻す。
 より強く自分の側に引く。
 
 これほど、大きな力に匹敵することになります。
 
 
 あとで、取り返せばいい。
 一時の弱気が、
 大きなエネルギーを奪ってしまいます。
 
 その一歩。
 どうしても踏みとどまってください。
 
 体重の重さは関係ありません。
 自分の生きている重さを、100%かけて、
 あきらめずに、踏みとどまってください。
 
 どんなに強い向かい風でも、
 いちばん強い時に、踏みとどまっていれば、
 ふっと、勢いが弱まったとき、
 ぐっと、前に進むことができます。
 
 
 踏みとどまって
 踏みとどまって
 もうひとつ
 踏みとどまって
 
 あなたの生き方を、貫いてください。



<第0281号 2006年3月9日(木)>

       おりてきた

         おりてきた
         一枚の羽
         やわらかな
         黒い羽
         
         ゆっくりと
         右に左にゆれて
         くるりとまわって
         足元におりた
         
         なにかが変わったのは
         わたしのなかにも
         羽が降りたから


   * 挿一輪 *

 頭の上で、鳥が羽ばたいたから。
 
 その一言で、片付けてしまえば、
 この詩はできなかったと思います。
 
 羽が一枚、
 ゆっくりと目の前を、
 地面まで降りてくる時間。
 
 じっと、
 ただその羽の動きを、
 見つめていた時間。
 
 その時間があったから、
 羽が降りてくる前と、
 そのあとでの、気持ちの違いがあります。
 
 小さな出会いが、
 不思議なほど、
 こころを落ち着かせてくれることがあります。
 不思議なほど、
 しんと澄んだ思いをつれてくることがあります。
 
 ただ、羽が降りてきただけのこと。
 でも、その羽を、じっと見ていたわたしのこころ。
 
 なにかが変わるきっかけは、
 そんな小さな偶然が、
 ふとした機会につくりだします。
 
 見逃さないでください。
 気をつけていれば、
 毎日のように、
 その機会は、あるはずですから。



<第0280号 2006年3月5日(日)>

       カスタネット

         雨上がり
         湿った土を踏んだなら
         水と一緒に
         光が踊る
         
         春という名の
         カスタネット
         ふいにだれかが
         鳴らして消えた


   * 挿一輪 *

 雨を含んだ土の上を、
 そっと踏んで、柔らかな感触。
 
 にじみ出た水に、
 春を呼ぶ光がはねて、
 風と一緒に踊っています。
 
 そのリズムは楽しくて、
 まるで、見えないだれかが、
 カスタネットで、
 リズムをとっているようです。
 
 なにか楽しいことがあったとき、
 いつのまにか、
 体のどこかで、
 リズムを刻んでいることはありませんか。
 
 春は、そんなリズムが大好きです。
 
 キラキラと、
 春の陽が踊っているときは、
 小さな楽器を取り出して、
 一緒に踊ってみたいですね。


<第0279号 2006年3月2日(木)>

       あせび

         小さな白い鈴
         春にゆれて
         ささやく
         
         小さないのちの鈴
         思いにゆれて
         つたえる
         
         すきとおった夢が
         風の羽をかりて
         おとずれるとき
         
         あなたの花は開いていますか
         あなたの鈴はささやきますか


   * 挿一輪 *

 あせび。
 あしび、ともいいます。
 漢字にすると、馬酔木。
 
 字のとおり、葉には毒があり、
 馬が間違えて食べると、酔っ払ったようになってしまいます。
 
 花はかわいいです。
 小さな白い鈴が寄り添って咲き、毒があるようには見えません。
 
 春の訪れを教えてくれる花で、
 大好きな花のひとつです。
 
 すずらんより小ぶりな花ですが、
 風にゆれていると、
 なにか音が聞こえてきそうな感じがします。
 
 まるで、
 春の風のことばを、
 音に変えて、教えてくれるようです。
 
 
 こころにも、そんな小さな鈴があるのかもしれません。
 春になって、風が吹いてきて、音をささやく。
 
 でも、
 鈴の花は、開いていなければ、音はしません。
 
 どんなに、やさしくあたたかな風が吹こうとも、
 受け取るこころが、
 その準備をしていなければ、通りすぎるだけです。
 
 春は、ふいにやってくるように見えて、
 実は、ずいぶん前から準備をしています。
 
 あなたも、少しずつ少しずつ、準備をしませんか。
 毎日、ひとつずつでもかまいません。
 
 続けることで、こころの鈴は、少しずつふくらんでゆきます。
 そして、ゆっくりと開いて。
 
 
 風は、あなたの白い花の鈴をみつけて、ゆらすはずです。
 夢という名の、春の風が。
 
 さあ、あなたの鈴の音を聴かせてください。
 あなた自身も、じっと耳をかたむけてくださいね。



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