2006年10月のこびん

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<第0324号 2006年10月29日(日)>

       コスモス

         コスモスの花の
         まんなかには
         
         コスモスの
         太陽が
         輝いている


   * 挿一輪 *

 コスモスというと何を思い浮かべますか?
 
 秋の澄んだ青空の下、風に揺れる花ですか?
 大きく広がる宇宙ですか?
 
 コスモスの花が、もし小さな宇宙を表しているのなら、
 コスモスの中心のおしべたちの黄色い輝きは、
 さながら小さな太陽に値するのかもしれません。
 
 そういえば、
 コスモスの原産地はメキシコです。
 そう、サボテンと砂漠。
 強い日差しの太陽がイメージされる国ですね。
 
 秋風に翻弄されるように揺れる花が、
 強烈な太陽をその中心に持っている。
 そう思うだけで、
 何か熱いものを感じます。
 
 
 いのちは、常にエネルギーを作り出しています。
 一瞬でも途切れてしまうと死んでしまいますから、
 太陽のように輝き続けています。
 
 あなたのなかにも、小さな太陽が輝いています。
 生まれてからずっとエネルギーを作り出して、
 生きている限り、途切れることがありません。
 
 コスモスのようには見えませんが、
 例えば、うれしい時の顔の輝きなどに、
 その人の太陽を感じることがありますね。
 
 
 生きている限り、輝き続けるあなたのなかの太陽。
 雨の日も、嵐の日も、その太陽は消えることがありません。
 
 それは、あなた自身が、
 小さな宇宙を表しているからです。
 
 
 コスモスの花の前に立ったときに、
 同じように輝く顔をして、
 二つの太陽同士、会話することができるといいですね。


<第0323号 2006年10月22日(日)>

       今日一日

         今日一日を
         今日一日のために
         生きることができたなら
         
         今日一日の
         ほんとうの大切さが
         わかるだろう
         
         今日一日の
         積み重ねで
         昨日も明日も
         生まれるのだから


   * 挿一輪 *

 考えてみれば、今日という一日がいちばん大切です。
 
 今日一日をしっかりと生きていれば、
 昨日を冷静に振り返ることができますし、
 明日を希望をもってむかえる準備ができます。
 
 今日一日があればこそ、
 昨日が生まれ、
 明日が生まれるわけですから、
 その影響はとても大きなものです。
 
 
 時間は、順序良く流れてゆくのですが、
 自分のからだのなかでは、
 たった今の自分を中心にして、
 水面に落ちた小さなポイントから始まります。
 
 波紋は次から次へと広がって、
 一方は昨日の方向に、
 一方は明日の方向に、と。
 
 
 むかしのことを思い出すのも、
 明日の夢を語るのも、
 起点は、そう、今ですよね。
 
 だからこそ、
 今日一日の生き方で、
 過去も、未来も、見え方が変わってきます。
 
 不思議です。
 これからやってくる明日は当然として、
 過ぎ去ってしまって、変えることのできない昨日でさえ、
 とらえ方が変わってくるのですから。
 
 
 今日という日がいかに大切かというのは、
 今日という日が、
 昨日や明日を含めて、
 時間軸そのものを、見直すことができるという点です。
 
 そして、今日は、どこにある?
 むずかしい顔をして、頭を抱えて考えなくても、
 そう、今、ここにあります。
 
 
 今日という一日がいちばん大切です。
 
 そう、実感して、自分のものにできたなら、
 あなたは、もう、
 自由に時間を飛びまわれる、
 こころのタイムマシンを、
 手に入れたのも同然です。


<第0322号 2006年10月15日(日)>

       雲の魚

         草原にひっくり返っても
         頭が見えない
         
         背中でグルッとまわっても
         尾びれが見えない
         
         空のすみからすみっこまで
         びっしり一面
         雲のうろこ
         
         おーい雲の魚
         ちょっとみんなを乗せてくれ
         
         おまえの好きな青い星を
         風と一緒に見たいから


   * 挿一輪 *

 秋は空を見上げるのが楽しみです。
 
 雲ひとつない青空も、気持ちがいいですが、
 様々な形の雲を、いつまでも見ているのもいいですね。
 
 風の強い日には、
 形を次々と変えながら、
 青い空のキャンパスの上を、
 真っ白な雲たちが駆け抜けてゆきます。
 
 
 雲には名前がついています。
 秋の空には、
 うろこ雲(いわし雲)が似合います。
 
 真っ白なうろこのようなたくさんの雲。
 空を泳ぐ魚は、
 風の流れに乗って、
 どこまでゆくのでしょうか。
 
 
 時々、驚くほど巨大な魚に出会います。
 見渡す限り、空一面の真っ白なうろこ。
 びっしりと埋め尽くすような空の魚の、
 頭と尻尾は見えません。
 
 きっと地球をすっぽりと覆うほどの、
 大きな雲の魚なのかもしれませんね。
 
 気持ちの良さそうな、
 ふわふわのうろこのひとつに乗せてもらい、
 地球をながめてみたい感じです。
 
 
 だれもが、
 一度、少し離れたところから、
 自分たちの生きている、青く輝く美しい星を、
 じっと見つめてみることが、必要だと思います。
 
 この星に生きている、
 かけがえのない、ひとつひとつのいのちを、
 じっと考えてみることが、必要だと思います。
 
 だれ一人として、
 汚したり、壊したり、奪ったりする権利はないはずです。
 
 
 いつでも、どこでも、だれとでも、
 見上げて見つけた、大きな雲の魚に乗って、
 いのちの故郷のこの星を、
 笑顔でまわれたらいいですね。


<第0321号 2006年10月8日(日)>

       雨粒レンズ

         空の涙の導きで
         さかさ世界の向こうがわ
         
         魚の瞳のアトラクション
         プルンと入ってみたものの
         
         自分の重さにたえかねて
         叫ぶ間もなく流される
         
         枠をなくした雨の粒
         ひとつになってどこまでも


   * 挿一輪 *

 窓ガラスやカサの先につく雨の粒。
 じっと見ていると、おもしろいことに気がつきます。
 
 映る景色はすべてさかさ。
 おまけに周りがぐるりと映り、魚眼レンズのようです。
 
 でも、この景色はずっと見ているわけにはいきません。
 
 雨の粒がどんどん大きくなって、
 自分の重みに耐えられなくなってしまい・・・。
 
 ほら、落ちてしまいました。
 せっかくのさかさ世界も、一瞬で消えてしまいます。
 
 
 涙も雨の粒と同じです。
 
 哀しいこと辛いこと。
 大きな粒にいっぱいためて、
 もう、どうしても重みに耐えられなくなって・・・。
 
 ほら、落ちてしまいました。
 悲しい気持ちをレンズに封じ込めて、
 少し、楽になりましたか?
 
 
 落ちた涙は、雨の粒と同じように、
 晴れて太陽が輝く日に、
 いっせいにゆらゆらと、空に帰ってゆきます。
 
 今度会うときには、
 笑顔のいっぱいにつまった、雨粒レンズを見たいですね。


<第0320号 2006年10月1日(日)>

       いつまでも

         空を見上げたら
         真っ白な雲の翼
         
         強い風にすこしずつ
         姿を変えて飛んでくる
         
         あなたのつぶやいた
         光るひとことも
         
         こころの風に乗って
         ホンッと頬に飛んでくる
         
         空色のハンカチにはさんで
         こころにしまったなら
         
         いつまでも
         いつまでも
         想いつづけてみる


   * 挿一輪 *

 秋を感じるものはいろいろあります。
 食べ物、虫の声、影の縁。
 
 空と浮かぶ雲も、秋を感じさせてくれます。
 
 
 見上げるとさまざまな雲が現れます。
 いわし雲、すじ雲、さっと筆で刷いた雲や毛糸だまのような雲。
 
 風の強さもありますが、
 刻一刻と変わる形のおもしろさ、
 すぐに時間がたってしまいます。
 
 動物の形や鳥の形。
 そういえば、だれかの顔の形に似ている雲までありますね。
 
 
 印象に残る雲の形を、
 いつまでも、
 こころの片すみにとどめたいことがあります。
 
 目の前の雲は、すこしずつ形を変えてゆくのに、
 こころの雲は、いつまでも同じ雲なのでしょう。
 
 
 ことばも雲に似ています。
 ことばも、こころという風に乗ってくるからです。
 
 いのちの風に乗って、
 すこしずつ形の変わることばが飛んでくる。
 
 できるならば、
 そのなかでもいちばん美しいかたちを、
 自分のこころのなかに、
 そのまましまっておきたい気もします。
 
 でも、哀しいかな、すこしずつ形はおぼろげになって。
 
 気がつくと、
 真っ青な秋の空だけが、残っているのかもしれませんね。



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