2006年11月のこびん

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<第0328号 2006年11月26日(日)>

       ありがとう

         ありがとう
         そういいたいことがある
         
         ことばにできなくても
         目や指先で表せなくても
         すなおになれなくて
         へそ曲がりと誤解されても
         
         ありがとう
         そう伝えたいことがある
         
         ありがとう
         こころのなかで思うだけで
         からだのすみっこでかみしめるだけで
         
         からだがほんわかとしてくる
         からだがほってりとしてくる
         
         ありがとう
         生きているんだな
         生きていることって
         こうして感じるんだな
         
         ありがとう
         そういいたいことがある
         
         そのこころの出会いだけでも
         生きていけるなんて
         とっても
         とっても
         すばらしいことじゃないか
         
         何にもできなくてもいいじゃないか
         嫌われてたっていいじゃないか
         
         ありがとう
         そう伝えたいことがある
         
         あなたも
         となりのあなたも
         みんな同じように生きている
         
         そうわかったなら
         いやなことなんてできないね
         
         ありがとう
         ありがとう
         
         うまれてきて
         生きていて
         
         ほんとうに
         ありがとう


   * 挿一輪 *

 器用、不器用は、人によって違います。
 指先の不器用から、伝え方の不器用まで。
 
 見える不器用なら、明るく笑いとばせても、
 見えない不器用は、誤解を招きます。
 
 
 こころの伝え方は、ただでさえ千差万別なのに、
 特定の方法だけ受け入れるのでは片手落ちです。
 
 「ありがとう」の伝え方も、ひとそれぞれです。
 
 気持ちよく、ことばや表情で伝えられるのが、
 いちばんベストなのでしょうが、
 恥ずかしかったり、へそ曲がりだったりして、
 逆の行動にさえ、でてしまうことだってあります。
 
 
 ちょっと工夫すれば、
 気持ちを伝えることはできそうですが、
 それさえも、タイミングの悪さでできないことがあります。
 
 でも、「ありがとう」の気持ちは忘れないでください。
 同じように、伝え方が不器用な人が、
 他にもいることを忘れないでください。
 
 「ありがとう」と同じくらい、
 「思いやること」は大切です。
 
 
 せっかくこの世に生まれ、
 こうして生きているのですから、
 
 どんな形でも、「ありがとう」を伝えていきたいです。
 
 人一倍不器用な私が、
 その気持ちを伝えるには、
 この詩のかたちしかありません。
 
 あなたなら、どんな形で伝えられますか?


<第0327号 2006年11月19日(日)>

       ゆめ

         どんなに
         遠くても
         燃え尽きることなく
         あなたの目で
         追ってゆくもの
         
         なんにもない
         そう思っていた
         青空のむこうがわに
         すこしずつ
         見えてくるもの
         
         追いかけるよりも
         しがみつくよりも
         秋の陽だまりのように
         そっと
         寄り添うもの


   * 挿一輪 *

 静かなものが、いちばん強いような気がします。
 
 ただ見つめていること。
 じっと耳をかたむけていること。
 体温を感じるくらいに寄り添っていること。
 
 そして、
 ゆめをこころにじっと秘めていること。
 
 ゆめをかなえるまでの時間を、
 特別な時間にするのではなく、
 そのまま日常にできたなら、
 どんなにステキなことでしょうか。
 
 大切なことは、
 あなたの時間は、
 あなたのためにあるということです。
 
 だれかのまねをすることなく、
 だれかと速さや技術を競うのではなく、
 あなたのペースで使うことができることです。
 
 見たいものがあるのならば、
 見えるまでじっと待ってください。
 静かに、あなたの目を信じて待ってください。
 
 あなたの目だからこそ見えてくるもの。
 そのイメージを信じて追ってください。
 
 陽だまりのあたたかさのなかで、
 静かに、
 自分のゆめと寄り添っていたいものですね。


<第0326号 2006年11月12日(日)>

       柿

         思わずつつきたくなる
         ホッペ
         
         オレンジ色のくぼみには
         風と踊る
         秋の太陽
         
         笑い声は
         音にならないほど
         しあわせのレベルが高い


   * 挿一輪 *

 柿、なっています。
 オレンジ色においしそうに。
 
 年によっては、知り合いの人からもらいます。
 今年はいっぱいなったから、って。
 
 虫食いや鳥さんのつついた跡がありますが、
 それはおいしい証拠。
 
 だからこそ、思わず自分だってつつきたい。
 健康そのもののホッペのようですから。
 
 柿に限らず秋の実りには、
 春から夏、そして秋への、ほぼ一年分の太陽がつまっています。
 
 だから、かじったときのあの甘み。
 だから、かじったときのあの時間。
 
 思わず、笑いたくなります。
 声を上げて笑うのもいいけれど、
 本当に楽しいときには、声も出ません。
 
 
 秋の光が美しく感じるのは、
 実りのもたらす、
 内側からの輝きのせいかもしれませんね。


<第0325号 2006年11月5日(日)>

       霜月満月

         銀色に輝く中天の鏡
         映すものはだれのこころ
         
         瞳がこころへの入口ならば
         鏡もまた異郷への入口
         
         二つの入口が合わさったときに
         通り抜ける一陣の光の風
         
         わたしはもう戻れない
         霜月満月
         残るのは空蝉のみ


   * 挿一輪 *

 秋の満月というと、中秋の名月を思い出します。
 でも、月の満ち欠けは、中秋で終わりではありません。
 
 秋も終わり、霜月と呼ばれる11月でも、満月は望めます。
 夜の空気が冷たく澄んでいる分、くっきりと姿をあらわします。
 
 ちょうど今日、5日が、その満月の日にあたります。
 雲がかからなければ、霜月の名月が見られると思います。
 
 秋から冬にかけての月は、はっとするくらいの鋭い光をもっています。
 まるで、中空に浮かぶ銀の魔法の鏡のようです。
 
 呪文を唱えると、何かが起こりそうな気配です。
 それでなくても、目を合わすと虜になりそうですね。
 
 風が冷たくなって、だれもがうつむきがちに歩きます。
 そんなときにこそ、胸を張って空を見上げて、
 ステキな宝物を、見つけてくださいね。



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