2006年12月のこびん

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<第0333号 2006年12月31日(日)>

       現在進行形

         ing
         英語の授業で習ったっけ
         ずっと忘れていたけれど
         
         ing
         小さくつぶやいてみる
         現在進行形
         
         いま
         今
         ここに
         それが
         現在
         
         生きている
         動いている
         決して止まらない
         それが
         進行形
         
         不思議だね
         
         ぼくたちは
         生まれてから
         いっときたりとも
         立ち止まったことはない
         
         まばたきする間でも
         現在進行形でなかったときがない
         
         不思議だね
         
         悩んだり
         悲しんだり
         くよくよしたり
         この一歩が
         永遠に踏み出せないと思っていても
         止まっていることはない
         
         ing
         生きている限り
         いのちでいる限り
         現在進行形
         
         だから
         力を抜いて
         身を任せて
         次の一歩を踏み出そう
         
         ing
         いのちが
         いちばん自然な形は
         現在進行形
         
         ご苦労様と
         ゆっくりと休ませてくれるまで
         歩みをとめることのない
         
         意識しなくても
         忘れても
         
         ing
         あなたは
         いのちのまっただなか
         現在進行形


   * 挿一輪 *

 止まっていないからこそ、
 いろいろなことに出会い、
 いろいろな思いをいだくのかもしれません。
 
 立ち止まっているようでも、
 進歩がないようでも、
 明日はやってきます。
 
 生きているということは、
 例えば、大晦日がいつまでも続くことがなく、
 次の大晦日が、またやって来ること。
 それも、決して同じ大晦日ではないこと。
 
 
 不思議だとは思いませんか?
 同じようで違っている。
 別のようでよく似ている。
 
 生きていることは、
 そんな不思議の連続かもしれません。
 
 そうですね、
 生まれたその時から、
 不思議は始まっているのですから。
 
 
 あなたのいのちの不思議、
 見つめてみませんか?


<第0332号 2006年12月24日(日)>

       前夜祭

         クリスマスイヴ
         キリストの誕生前夜
         
         キリストほど有名でなくても
         確実にやってくるもの
         たとえば
         あなたの誕生前夜
         
         生まれたという
         何ものにも変えがたい重さでは
         たったひとつのいのちの重さでは
         
         祝福されるべき奇跡
         もしかしたら別の世界では
         あなたはその世界中で
         祝福されるべき誕生前夜
         
         ひとりだけの世界かもしれない
         寄り添う人との
         ふたりだけの世界かもしれない
         家族や友人たちとの
         少し広い世界かもしれない
         
         祝福の数とか
         祝福の大きさとか
         比べることはないのだから
         
         なぜって
         あなたとわたし
         いのちの重さはおなじだから
         
         前夜祭
         あなた自身を祝ってもいい
         寄り添う人を祝ってもいい
         
         あなたは気がつかないだけなんだ
         あなた以外に
         あなたを祝っている人がかならずいる
         
         クリスマスイヴの
         「クリスマス」のところに
         いれてごらん
         あなたの名前を
         
         そっと耳を澄ませて聞いてごらん
         呼ばれる名前を


   * 挿一輪 *

 クリスマスイヴ。
 もちろん、イエスキリストの誕生前夜です。
 
 クリスチャンではないけれど、ケーキを買ってプレゼントを贈って。
 家族や寄り添う人と静かにすごしたり、
 友達同士でさわぐのもいいですね。
 
 どういう形であれ、ひとりの誕生日の前夜祭を、
 こんなに多くの人たちが祝うなんて、
 イエスキリストは、しあわせな方だと思います。
 
 それ以上に、
 誕生ということの、いのちをこの世に得るということの、
 大切さと、
 そのことを、祝福するということの、
 大切さを、
 教えてくれているのではないでしょうか。
 
 いのちの重さは、みな同じです。
 そのことを、それだけのことを教えるために、
 神と呼ばれるものが、この世の中に必要なのかもしれません。
 
 クリスマスイヴを祝うことは、
 同じ生を受けている、あなた自身を祝うことでもあるのです。
 
 いのちの重さを自覚して、
 その大切さも、みな平等だとしみじみと感じるときに、
 神はにっこりと、微笑まれるような気がします。
 
 今日一日でもかまいません。
 あなたの胸に動き続ける鼓動に手を当てて、
 あなたの生きていることの大切さと、
 同じ数え切れないいのちたちの大切さとを、
 祝福してあげてくださいね。


<第0331号 2006年12月17日(日)>

       December rose

         December rose
         なにもかもなくして
         とぼとぼと歩いていた
         迷いこんだ路地裏に
         描きかけの小さな陽だまり
         
         December rose
         ふと呼び止められた
         出会いはドレス色の風
         顔を上げてごらん
         見つめているピンクのバラ
         
         
         December rose
         開いたばかりではないけれど
         花びらもひとつ落ちたけど
         決して誇りは捨ててない
         決して気品はなくさない
         
         December rose
         そっと触れたらしっとりと
         頬のやさしさほんのりと
         甘い香が薄れても
         あたたかぬくもり陽の香
         
         
         December rose
         たとえすべてをなくしても
         大切なものは消えはしない
         こころの引き出し開けてみて
         ぎっしりいのちの贈り物
         
         December rose
         夢への小道をなくしても
         想う気持ちは消えはしない
         ひとつひとつの積みかさね
         つぼみはいつか花になる
         
         
         December rose
         ひとひら花びら落としては
         ピンクのバラのメッセージ
         わたしは散って夢になる
         あなたは咲いて風になれ
         
         December rose
         ひとひら花びら落としては
         ピンクのバラのメッセージ
         わたしは散って明日になる
         あなたは咲いて明日になれ


   * 挿一輪 *

 木枯らしが吹きぬける12月のある日、
 色彩のなくなった風景のなかで、目に飛び込んだもの。
 
 それは、
 もう花びらが落ちそうなピンクのバラでした。
 
 December rose (12月のバラ)。
 ふと浮かんだことばから、
 この詩は生まれました。
 
 季節外れのこの時期に咲いたからこそ、
 目をとめた人に、
 不思議な力を与えてくれるバラの花。
 
 
 「生きている」ということは、あたたかなこと。
 「生きている」ということは、咲いていること。
 
 
 教えてくれたピンクのバラ。
 
 ほんとうにステキな出会いに、感謝ですね。


<第0330号 2006年12月10日(日)>

       息をはく

         息をはく
         真っ白な
         さざんかの花のような息をはく
         
         息をはく
         風のように
         ことばにならない息をはく
         
         息をはく
         冷たい天からのしずくに
         挑むように息をはく
         
         息をはく
         黄金色のステンドグラスに
         祈るように息をはく
         
         こうして
         ぼくたちは
         朝のひとときを確かめる
         鏡でなければ見えない自分が
         生きているあかしを確かめる
         
         息をはく
         それが今日という日のはじまりならば
         それが明日という日への第一歩ならば
         
         息をはく
         ゆっくりと
         堂々と
         だれにも負けないくらいの
         大きな息をはく


   * 挿一輪 *

 いつのまにか、
 自分の息が白く見えるほど、寒くなっていることに気がつきます。
 
 もしかしたら、もう数日前から白い息だったのかもしれないのですが、
 気がつかないものですね。
 
 生きていることに気がつくことは、
 ふとした小さなできごとが教えてくれるようです。
 
 「あなたは生きています」
 
 そう、だれかに言われるよりも、本で読むよりも、
 自分の身の回りの小さなできごとのほうが、
 はっとしますね。
 
 意識しなくても、生きている。
 当たり前のように過ごしている時間が、
 実は、とても大切な時間だと再確認する瞬間です。
 
 はいた息が白くなるのは、冬の寒いときだけです。
 
 寒さで、体もこころも縮こまりがちですが、
 息の白さを見ていると、
 
 「生きているんだから、今日もがんばって」
 
 そう、励まされているような気がしませんか?


<第0329号 2006年12月3日(日)>

       落葉

         木枯らしが吹いて
         いちょうのことばが
         一枚落ちてきた
         
         木枯らしが吹いて
         黄金色のことばが
         次々と落ちてきた
         
         あんなに物静かだったのに
         語り始めると止まらない
         
         とどまることなく
         語り続けて
         とどまることなく
         語り続けて
         
         日が沈むころ
         こそりと
         最後のひとことが
         わたしのてのひらに
         落ちた
         
         いちょうは満足したように
         深い眠りに入っていった
         あざやかな緑の
         春のことばを育てるために


   * 挿一輪 *

 朝陽に輝いていた、いちょうの黄色い葉が、
 強い北風でみるみるまに散ってゆきました。
 
 それまでは、
 じっと耐えていたのに不思議ですね。
 
 時を知る。
 
 落ちる葉に託したメッセージを、
 しっかりと、
 この手で受けとったような気がしました。






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