2007年6月のこびん

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<第0358号 2007年6月24日(日)>

       いのちは

         いのちは
         時間のなかで生きてゆくんだね
         この世では
         
         じっと動かない石でも
         時間のなかで生きてゆくんだね
         この世では
         
         あっというまに
         通り過ぎてゆく
         光
         
         いつのまにか
         すり抜けてしまった
         出会い
         
         てのひらに
         ふっと乗り
         ふっと去ってゆく
         風の感触のように
         
         わたしは
         あなたは
         時間のなかで生きてゆくんだね
         この世では
         
         ピアノの音が流れてくる
         遅い朝のパンの匂いが漂ってくる
         そして
         飛び込んでくる
         梅雨の晴れ間の
         太陽の主張!
         
         でさえも
         時間のなかで生きてゆくんだね
         時間のなかで生かされてゆくんだね
         
         この世で
         まごうことのない事実
         わたしの
         あなたの
         期限
         
         ガラスが割れた
         割れる前の無関心と
         割れた後の突きつけられた衝撃と
         思わず
         見上げる空!
         
         空も時間でできている
         わたしの
         あなたの
         見ているこの空は
         少なくても
         
         いのちは
         時間のなかで生きてゆくんだね
         この世では
         
         すべてを忘れても
         いつもこころのかたすみに
         おいておきたい
         ゴールライン


   * 挿一輪 *

 限りがあるのは、時間ではありません。
 限りがあるのは、時間のなかで生きるいのちの側です。
 
 そのことを少しでも意識していると、
 日常の過ごし方が違ってくるかもしれません。
 ものの見かたが変わってくるかもしれません。
 
 ほんとうは、
 そんなことを意識しないで、
 まっすぐに生ききることが、いちばんいいのでしょうが、
 そこまで強くなれるのが、いちばんいいのでしょうが。
 
 
 知らず知らずにゴールのラインをまたいだときに、
 生涯でいちばん良い顔をしていたいですね。


<第0357号 2007年6月17日(日)>

       あじさい通り

         地図に載ってはない
         名前がついているわけではない
         知っているのは
         名付け親の自分だけ
         
         広い通りではない
         まっすぐの道でもない
         いきなり細い路地に入り
         曲がりくねって
         突き当りを右
         
         いつもの犬にほえられて
         水たまりよけながら
         短い砂利道通り抜け
         バス通りに出るまでの
         一筆書きの遠回り
         
         濃い青色の大輪と
         赤紫のがくアジサイ
         道にせり出す大株と
         塀からひとつのぞく花
         
         それぞれ個性があるけれど
         みんなステキなアジサイたち
         一年ぶりだねと声をかける
         
         両手使っても数え切れない
         ここはたしかに
         あじさい通り


   * 挿一輪 *

 サボテンの花が咲きました。
 
 小さなサボテンですが、
 鉢が小さくなって窮屈そうだったので植え替えたのです。
 
 それが原因かどうか、
 小さな体に似合わず大きな花芽がにょきっと伸び、
 どんな花が咲くのかと話していたのですが。
 
 メールが来たものですから開いたら、
 「咲いたよ」というメッセージとともに
 真っ白な大輪の花の写真。
 
 まったく、
 どこからこんな大きな花が咲くのだろうというくらい、
 みごとな花でした。
 
 ささやかなことですが、
 とてもうれしくなり、
 ふと空を見上げたら抜けるような青空。
 
 いつもよりもその色が濃く見えたのも、
 サボテンの花のおかげでしょうか。
 
 気持ちって、不思議なものですね。
 
 残念ながら、
 夜に家に帰ったら花は閉じていました。
 
 次の朝期待したのですが、
 もう咲いてはくれませんでした。
 でもそのうれしさは残っています。
 
 ささやかなこと。
 でも、ステキなできごと。
 見つけようとすれば、
 毎日どこかで出会えると思いませんか?


<第0356号 2007年6月10日(日)>

       サボテンの花

         メールが来た
         サボテンの花が咲いたよ
         と
         
         小さなからだに不似合いの
         真っ白な大輪の花が
         今朝
         いちばんで
         
         時間を気にして
         急いでいたから
         気がつかなかった
         サボテンの花
         
         立ち止まって
         見上げた空は
         
         いつもより
         ずっと
         深い青
         
         メールを返した
         良かったね
         と


   * 挿一輪 *

 サボテンの花が咲きました。
 
 小さなサボテンですが、
 鉢が小さくなって窮屈そうだったので植え替えたのです。
 
 それが原因かどうか、
 小さな体に似合わず大きな花芽がにょきっと伸び、
 どんな花が咲くのかと話していたのですが。
 
 メールが来たものですから開いたら、
 「咲いたよ」というメッセージとともに
 真っ白な大輪の花の写真。
 
 まったく、
 どこからこんな大きな花が咲くのだろうというくらい、
 みごとな花でした。
 
 ささやかなことですが、
 とてもうれしくなり、
 ふと空を見上げたら抜けるような青空。
 
 いつもよりもその色が濃く見えたのも、
 サボテンの花のおかげでしょうか。
 
 気持ちって、不思議なものですね。
 
 残念ながら、
 夜に家に帰ったら花は閉じていました。
 
 次の朝期待したのですが、
 もう咲いてはくれませんでした。
 でもそのうれしさは残っています。
 
 ささやかなこと。
 でも、ステキなできごと。
 見つけようとすれば、
 毎日どこかで出会えると思いませんか?


<第0355号 2007年6月3日(日)>

       日時計

         雨の日に
         ただじっと濡れていた
         
         時刻を指し示す
         くっきりとした陽射しもないままに
         
         だれも振り返らず
         通り過ぎてゆくなかで
         
         赤い小さなカサが止まった
         
         細く白い指が
         刻印された
         濡れた時刻をなでて
         
         「雨の時間がわかるのね」
         
         日時計は
         つつーっと一滴
         雨粒を
         
         滑り台のように
         ころがしてほほえんだ


   * 挿一輪 *

 もう6月。
 梅雨の季節です。
 
 曇り空や雨の日が多くなって、気分もどんよりでしょうか。
 
 
 日時計は手持ち無沙汰です。
 
 梅雨空のあいまから出る強烈な日光は歓迎ですが、
 雨の日はお手上げです。
 
 濡れた日時計は、
 やることもなくただじっと眠っているようにみえます。
 
 けれど、
 そんな濡れた日時計からでも、
 時間を引き出してしまう子どもがいます。
 
 
 雨の時間。
 
 さてどんな時間なのでしょうか?
 やわらかくやさしい時間でしょうか?
 しっとりとすこし哀しげな時間でしょうか?
 
 雨の日だから関係ないと思っているもののなかに、
 新しい発見があるのかもしれませんね。


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