2007年9月のこびん

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<第0372号 2007年9月30日(日)>

       ほんとうの空

         どこまでが
         ほんとうの
         空なんだろう
         
         透明なストラップに
         透明なレンズをつけて
         
         秋風に向かって
         空を
         さがしにゆく
         
         夏草を
         きれいに刈り上げた
         小さな土手に
         ねっころがり
         雲の動きを見ていたら
         
         ふと気がついて
         自分のこころを
         レンズでのぞく
         
         ほんとうの
         空は
         小さな胸のなかに
         ゆったりと
         広がって
         
         とっくり
         とっくりと
         脈打っていたよ


   * 挿一輪 *

 秋ですね。
 空が広く高いです。
 
 つい誘われるように、
 広く見渡せるところにでかけてみたくなります。
 
 雲のぽっかりと浮かんでいる空。
 でも、
 それを見ている自分自身にも、
 もっと大きな空があります。
 
 こころの空。
 
 いつもありながら、
 気がつきません。
 
 魔法のレンズでそっとのぞくと、
 もうひとつの空が見えてきます。
 
 自分の見ている空は、
 ほんとうは、
 胸の中に、
 大きく高く広がっているのかもしれませんね。


<第0371号 2007年9月23日(日)>

       日が暮れる前に

         だめなんだなあ
         ころんで立ち上がったとき
         すぐに
         歩き出せないから
         
         どうしてだろうって
         ころんだ理由を
         うつむいて
         考えているから
         
         ころんじゃった
         って
         えへへと笑い
         
         なにごともなかったように
         すたすたと
         歩き出せたなら
         
         もう少し
         先の
         あの辻まで
         歩いてゆけたかな
         
         日が暮れるまえに


   * 挿一輪 *

 下を向いて悩んでいる時間に、
 前をむいて歩き出せたら、
 もう少し、
 人生が変わっていたのでしょうか。
 
 
 あわてんぼで、
 そそっかしくて、
 いつも失敗ばかりしていたころ。
 
 よく考えて行動すればいいんだ。
 
 自分なりに結論づけて、
 それ以来慎重派?になったようですが。
 
 といって、
 本質的なあわてんぼは、
 治りません。
 
 それにもまして、
 慎重という名の、
 リスタートの遅いというお荷物まで、
 くっつけてしまいました。
 
 もっとも、
 もとから優柔不断という声もありますが、
 きっと、
 居心地のいい方向に逃げてしまったのでしょうね。
 
 
 ころんでしまって、
 (ちなみに道でもよくころびますが)
 立ち上がったとき。
 
 あなたなら、
 じっと考えていますか?
 それとも、
 もう、歩き出していますか?


<第0370号 2007年9月16日(日)>

       ねこじゃらし

         くすぐりあって
         ねこじゃらし
         
         伸びたばかりの
         緑の触手を
         たがいに向けて
         それぞれに
         
         こしょり
         こしょり
         こしょこしょと
         
         ほんとは
         風が伝えてきた
         秋の国のことのはを
         
         聞いた
         聞いた
         教えてと
         次から次へと
         伝言ゲーム
         
         端から端へと伝えたら
         こんどは
         だれかに伝えたい
         
         通りかかった
         いつものトラと
         お散歩ついでの
         コロの背に
         
         くすぐりついでに
         ねこじゃらし
         
         こしょり
         こしょり
         こしょこしょと


   * 挿一輪 *

 緑色の、穂の出たばかりのねこじゃらしが好きです。
 
 種が大きく育って茶色になった、
 いかにもねこじゃらし、というのも好きですが。
 
 
 それにしても、
 ねこじゃらしとはいい名前ですね。
 
 ねこじゃなくても、
 その手触りはくせになりそうです。
 子どものころ、よく友だちにいたずらしましたっけ。
 
 
 よく見ていたら、
 ねこじゃらし同士でも、
 くすぐりあいをしているみたいです。
 
 いえいえ、
 吹いてきた秋風の、
 話を聞いて、教えあっていたのでしょうね。
 
 次は、だれに伝えましょうか。
 ノラ猫さんか、
 お散歩ワンちゃんか。
 
 あなたも触れてみませんか?
 きっと教えてもらえますよ。


<第0369号 2007年9月9日(日)>

       台風

         一晩の風雨が
         とおりすぎて
         
         葉の陰に
         ふるえゆれるのは
         
         こわれた
         クモの巣
         
         けれど
         雲間からの
         ひとすじの光
         
         笑みのように
         こぼれた光
         
         破れた糸が
         銀のかがやきになる
         
         クモは
         小さな奇跡を
         知らない


   * 挿一輪 *

 台風の季節です。
 できたら来てほしくないのですが、
 自然は都合よくゆきません。
 
 せっかく作ったクモの糸も、
 あっというまに破られてしまいました。
 
 もう、
 使い物にならない巣をあきらめて、
 主のクモは他に行ってしまったのでしょうか。
 
 静けさのなかで、
 破れた糸だけが垂れ下がっています。
 
 でも、
 偶然のいたずらか差し込んできた一筋の光。
 
 クモの糸に銀色の輝きを与え、
 新しいいのちが吹き込まれたようです。
 
 作ろうと思っても、
 作れない美しさ。
 
 本来の目的と違ったところで、
 こうして何かに役立つことがあります。
 
 確かにクモには不必要ですが、
 見ている私を一瞬立ち止まらせた美しさ。
 
 クモは首をかしげている?かもしれませんね。


<第0368号 2007年9月2日(日)>

       幼なじみ

         ふと
         立ち止まったら
         目が
         合った
         
         絵本の
         少女と
         目が
         合った
         
         ずっと
         ずっと
         むかしに
         
         やっぱり
         こうして
         見つめあったね


   * 挿一輪 *

 本屋でふと気になって書棚から抜いた絵本。
 表紙を見たとたんに、
 なつかしい絵が飛び込んできました。
 
 まるで、
 久しぶりに歩いたふるさとの路地で、
 角を曲がったとたん、
 ばったりと出会った幼なじみのように。
 
 忘れていたあの頃を、
 鮮明に思い出させてくれましたが、
 それ以上に、
 本の中身から、
 忘れていた大切なことを思い出させてくれました。
 
 いちどなくしてしまって、
 そのなくしたことですら、
 忘れてしまっていたものを、
 「だめじゃないの、忘れては」
 そう、教えてくれたようでした。
 
 ずっと、悩んでいたり、
 ずっと、なにかを探していると、
 かならず答えはやってくると聞きました。
 
 たしかに、
 ふとした再会から、
 幼なじみの本に教えてもらいました。
 
 あなたも、
 そんな体験ありませんか?



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