2007年12月のこびん

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<第0385号 2007年12月30日(日)>

       とびら

         あなたの胸の小さなとびら
         「みつめる」鍵であくとびら
         
         ちいさな部屋はほのかに暗く
         置かれているのは今日までの荷物
         
         あなたの疲れをいやしたら
         また鍵を閉めて街に出てゆける
         
         でもあまりに疲れきったなら
         この部屋からも逃げ出したい
         そんなとき
         
         その奥に
         もうひとつの小さなとびら
         たくさんの荷物で隠れたとびら
         
         さがしてごらん
         もうわすれてしまったけれど
         子どものころ
         公園の片すみの
         秘密の路地に通じたとびらのように
         
         ほらここさ
         鍵なんてかかっていない
         ずっとそのままで
         あなたを待っていたなつかしい光
         
         いつでもあけられるとびら
         だれもがあけれらるとびら
         
         飛び出して
         走り回って
         ねっころがって
         真っ青な空に
         落書きをして
         深呼吸をして
         
         やっと会えたね
         おかえりなさい


   * 挿一輪 *

 なぜか、
 他人のこころをのぞくことに、
 興味を持つ話題がにぎわっています。
 
 たくさんの事件の報道で、
 みつめる方向を見失っているのかもしれません。
 
 もっと大切なものを忘れているよ、
 帰っておいで。
 
 そう呼びかけているのは、
 あなた自身のこころかもしれません。
 
 いつものこころの奥に、
 実は隠れているとってもやさしい世界。
 
 あのころには戻れない?
 時間は確かに戻りませんが、
 あのころと同じ世界へのとびらはあります。
 
 捜しに旅に出なくても、
 そうチルチルミチルの青い鳥のように、
 とびらはあなたのこころの奥に。
 
 さあ、行ってみませんか?
 きっとふるさとのように、
 「おかえりなさい」と
 あなたを包んでくれますから。


<第0384号 2007年12月23日(日)>

       伝えたいこと

         どうしても
         伝えたいことがあります
         
         どんなに
         ささやかなことでも
         
         かなしみをひとつ
         溶かしてください
         
         あなたのてのひらの
         あたたかさで
         
         あなたのはく息の
         白さで
         
         そっと溶かして
         空にかえしてください
         
         まっさらにして
         海にかえしてください
         
         ひとりひとつで
         ひとりひとつずつで
         
         たったそれだけで
         かなしみは透明になり
         
         しずかにあなたを
         まもってくれます
         
         いつでもあなたを
         ささえてくれます
         
         だから
         つたえたいことがあります
         
         けっしてかなしみを
         そのままですてないでください
         
         ふるえるこいぬを
         箱にいれてすてないでください
         
         もう大丈夫だよと
         胸にだきよせるように
         
         あなたのこころに
         つつんであげてください
         
         いのちの
         みなもとになるように
         
         かみさまの
         みなもとになるように


   * 挿一輪 *

 かなしいことが、
 とても目につきます。
 
 やりきれないニュースが、
 あふれています。
 
 一度になくすことはできないかもしれません。
 
 でも。
 
 ひとりひとりが、
 かなしみをひとつ溶かし。
 
 ひとりひとりが、
 その大変さに目覚めて、
 決してかなしみを増やさないようにすれば。
 
 そのささやかな積み重ねで、
 すこしずつでも、
 かなしみが減ってゆくと信じています。
 
 
 かみさまも、
 ひとつひとつのかなしみを、
 集めて溶かしてできたものですから。


<第0383号 2007年12月16日(日)>

       こころの弦

         こころに張った
         透明な弦を
         はじく
         
         限りのない空に
         まっすぐ
         突き立てた指で
         はじく
         
         こころは
         わたしのなかを出て
         波紋のように
         広がり
         
         ハープの弦のように
         風の和音を
         奏でる
         
         耳をすませて
         もしも聞こえたならば
         
         あなたの
         こころの弦を
         はじいてごらん
         
         またひとつ
         空に
         光る弦が張られた
         
         ひとつの弦が
         ひとつのこころを
         解き放ち
         
         別の弦を
         その倍音で
         呼び覚ます
         
         虹が光のプリズムならば
         弦は音のプリズムに違いない


   * 挿一輪 *

 もしもこころに、
 透明な弦が張られていたのなら、
 気持ちを伝えるとは、
 その弦をはじくことからはじまります。
 
 思いっきりはじいて、
 強いメッセージを送るのも、
 触れるようにはじいて、
 気がつくのを待っているのも。
 
 弦からはじかれた波動が、
 気持ちを伝えてゆきます。
 
 ひとつの弦をはじいても、
 広い空に飛び出して、
 まるでハープのたくさんの弦のように、
 不思議な和音を奏でることでしょう。
 
 そして、
 眠っている、
 じっとなにかを待っている、
 あなたのこころの透明な弦に、
 共鳴を呼びかけることでしょう。
 
 ひとつの気持ちが、
 さまざまな出会いを求め、
 光の虹のように、
 美しいスペクトルを投影するように。
 
 あなたの弦は
 きっと音の虹のように、
 いつでも、
 美しいプリズムになるのかもしれませんね。


<第0382号 2007年12月9日(日)>

       うつる

         うつる
         ゆらゆらと
         みなもに
         
         うつる
         きっちりと
         かがみに
         
         うつる
         しっとりと
         ひとみに
         
         どれも
         うつった
         わたしだけれど
         
         どれも
         ほんとうの
         わたしだから
         
         いつくしむように
         まっすぐの光で
         ふれてみて
         
         うつる
         ひんやりとした
         せつないきょりが
         
         うつる
         よりそう
         ぬくもりにかわる


   * 挿一輪 *

 街を歩いていると、
 ショーウインドウの前で立ち止まることがあります。
 
 ステキな服だったり、欲しいものだったり、
 イルミネーションに目を奪われたり。
 
 立ち去ろうとすると、
 ふと見たことがあるものが映っています。
 
 じっとのぞきこむ、
 もう一人の自分ではありませんか。
 
 ふだん意識することのあまりない自分の姿。
 突然、対面すると驚きます。
 
 映っている対象によって、
 ゆがんだり、ゆれたり、小さくなったり。
 
 その微妙な距離感が、
 いつもと違った自分を教えてくれるのでしょうか。
 
 でも、考えてみると、
 映っているのは、自分以外のだれでもありません。
 
 だれかのこころに映っている自分。
 自分のこころに映っているだれか。
 
 その不思議な縁を考えると、
 映っていることに親しみを感じてきます。
 
 映ることが、ぬくもりに変わるとき、
 もう少しやさしい世の中に、
 なるのかもしれませんね。


<第0381号 2007年12月2日(日)>

       カメラ

         いまの
         この
         瞬間を
         とっておきたい
         
         そんなゆめを
         笑顔で
         かなえてくれる
         小さな箱
         
         だれにも
         気がつかれない
         ささやかな
         ふれあいだけど
         
         出会いをうむ
         びっくり箱が
         ひとりくらい
         友だちであってもいい


   * 挿一輪 *

 写真が好きです。
 中学生のころからずっとです。
 
 デジカメなどあろうはずもなく、
 カラーフィルムも高価な時代でした。
 
 現像しても、失敗して撮れてないときもあり、
 写真が仕上がるまでどきどきものでした。
 
 
 デジカメの時代はほんとうに便利です。
 
 フィルムの残りの枚数を考えずにすみますし、
 その場で結果がわかり、
 パソコンでレタッチもできます。
 
 でも、
 写したいものと出会って、
 シャッターを押す瞬間の気持ちは、
 あの頃と変わりません。
 
 
 ふと目に止まったものと、
 こころのなかでことばをかわし、
 その楽しさを残したいと思っています。
 
 そこにカメラがあれば、写真を撮り、
 ことばがうかべば、詩にします。
 
 写真と詩は、
 表現方法が違うだけで、
 ステキな瞬間を焼き付けるのは、
 同じだと思います。
 
 
 あなたにとってのステキな一瞬。
 
 そんなとき、
 あなたはこころに、
 なにを使って残しますか?
 
 これからも小さな出会い、
 伝えてゆきたいと思いますので、
 一緒に楽しんでくださいね。



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