2009年1月のこびん

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<第0441号 2009年1月25日(日)>

       あなたに 4

         カメラのシャッターを
         押す瞬間の目と
         鏡をじっと
         のぞきこむときの目と
         
         遠くから季節の変わりを
         伝える風を聞く耳と
         最後のひとことを告げる
         震える声を聞く耳と
         
         続けて同じあなたなんて
         これっぽっちも
         いないことがわかる
         
         笑って泣いて
         きりっと顔を上げて
         百面相は生きている証だから


   * 挿一輪 *

 百面相でお客さんを喜ばす芸人がいます。
 どうしてこんなにたくさんの表情ができるのか、
 不思議に思えるほど豊かな変化です。
 
 笑いながらじっと見いるほうも、
 実は同じように百面相をしているに違いありません。
 笑顔のときは笑い顔に、
 哀しい表情は哀しい顔に、
 いつのまにか対峙する感情がそのまま入りこんでいます。
 
 芸人のようにプロでなくても、
 だれもが毎日のようにその場その場で、
 豊かな表情を使い分けています。
 
 仕事に、家族に、友人に、もしかしたら一人で本を読んでいるときに。
 じっと観察していたら、
 一時も同じ表情を見つけることはできないのかもしれません。
 
 生きていることを感じることはむずかしいことですか。
 こんな表情ひとつの変化にしても、
 たしかな生きている証になっています。
 
 感情をコントロールすることは大人の条件かもしれませんが、
 感情を細かく表すことができることも、
 より豊かな毎日につながってゆくのかもしれませんね。


<第0440号 2009年1月18日(日)>

       あなたに 3

         まっしろなさざんかを
         染めてみたいと
         思う人が
         いるのだろうか
         
         たとえ思って近づいても
         沁みるような白に
         ただ指をふれるだけで
         せいっぱいではないか
         
         白は染めるための
         白ではないと
         そっと教えられる
         
         白はそのままで
         りんと枯れてゆくと
         そっと諭される


   * 挿一輪 *

 清楚な白いさざんかが咲いていました。
 冬の早い夕暮れ時に、
 ほんのりと灯るようにふたつみっつと。
 
 鮮やかな紅色や優しいピンク色、
 さざんかにも他の色はありますが、
 白いさざんかに出会うと、
 なにかを語りかけられているような気がします。
 
 様々な色があふれている街角に、
 いつのまにか感覚が慣れてしまって、
 気がつくと、より鮮やかな色に気をひかれます。
 
 街角だけではなく、
 そこに暮らしている人々にも、
 目立つもの、はっきりとしているものを、
 選択するような気持ちがあるのではないでしょうか。
 
 白はブランクではありません。
 まして塗るための下地でもありません。
 白は白という色です。
 
 白という生きかたがあるように、
 決して染まることなく、
 自分の色に誇りをもって歩いてゆきたいですね。


<第0439号 2009年1月11日(日)>

       あなたに 2

         悩んでいるうちは
         もしかしたら
         いちばん美しい時間かも
         しれない
         
         迷っているうちは
         もしかしたら
         いちばん楽しい時間かも
         しれない
         
         360度のパノラマは
         見渡せるけれど
         行きつくせないのだから
         
         歩き出せるのは
         そのうちのたった一本
         細い道だけだから


   * 挿一輪 *

 悩んでいるときや迷っているとき、
 考えても思いこんでも進みかたがわからずに、
 その場から一歩も動けないこともあります。
 
 まわりが真っ暗で、何も見えないときもありますが、
 意外と進む道はたくさんあるのに、
 どの方向に進んでいいのかわからない、
 意外とそういうことが多いように思いませんか。
 
 目の前にあればその道を進むのでしょうが、
 広い草原のまんなかで、
 どちらに行ってもいいといわれても、
 さて急には足が動きません。
 
 背伸びをしてよく見ると、
 はるか彼方にいろいろな目標が見えてきます。
 あなたの好きなこと、興味のあること、
 あなたを手招きして呼ぶこと。
 
 でも、進むことのできる方向は一方向だけです。
 いつかはどれかを選んで、歩き出さなければなりません。
 だからこそ、いまの悩んでいる時間を大切にしてください。
 
 悩み迷っているときこそがこころの糧になり、
 一歩を踏み出したあなたを、しっかりと支えてくれるはずですから。


<第0438号 2009年1月4日(日)>

       あなたに 1

         真っ白な息を見ていると
         はっとする
         生きていることは
         見えること
         
         足元の影を見ていると
         はっとする
         生きていることは
         動くこと
         
         目をつぶっていないで
         なにかを
         みつめてごらん
         
         立ち止まっていないで
         一歩を
         ふみだしてごらん


   * 挿一輪 *

 いちばん大切なことなのに、
 意識していないことがあります。
 それは、あなた自身が生きていることです。
 
 決してだれにも代わってもらえず、
 決してだれにもゆずることもできない、
 たったひとつのいのちです。
 
 どんなに小さな道端の草花でも、
 じっと動かないようにみえても生きています。
 呼吸をして成長してゆきます。
 
 朝には小さな葉にびっしりと水滴をつけて、
 こうして生きているんだよ、と教えてくれます。
 あなたの吐く白い息と同じです。
 
 笑っているときも、怒っているときも、
 泣いているときも、真剣に打ち込んでいるときも、
 眠っているときでさえも、あなたは生きつづけています。
 
 こんなにすごいことがあなたを支えています。
 こんなに大切なことをあなたは無意識にしています。
 
 だから、大切なあなたをみつめてください。
 しっかりとあなたを受け止めてください。



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