2009年2月のこびん

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<第0445号 2009年2月22日(日)>

       あなたに 8

         ふとため息をつく
         そんなわずかなあいだでも
         止まっているものは
         たったひとつもない
         
         夕暮れは濃さを増し
         不安は深くなる
         子どもたちの遊ぶ声も
         溶けては消えてゆく
         
         時間の流れが
         この世でいちばん
         じゃじゃ馬なんだ
         
         道端にしゃがみこんでいたら
         明日という騎手は
         交代してはくれない


   * 挿一輪 *

 目の前を風のように馬が駆けてゆきます。
 背中には颯爽とした騎手が手綱を握っています。
 通り過ぎたとたんまぶしい光がさして。
 
 ふと目が覚めて、ああ夢だったのかと気がつきました。
 休日の朝は仕事がないせいか、夢の余韻に浸れます。
 
 どうしてその夢を見たのか不思議になることがありませんか。
 特に夢の中の世界が高速に移り変わるとき、
 なにかに追われるような不安を感じます。
 
 社会に出ていると、毎日の行動は時間に管理されています。
 それぞれのペースで動きたくても仕事は融通がききません。
 だからといって、時間を消してしまうと不安がおそいます。
 
 ひと休みして、道端によけて人々の動きをじっと見ていると、
 その速さが怖くなることがあります。
 自分もこんな速さで生きているのかと。
 
 時間の流れは、いったいどこにあるのでしょうか。
 あなたのコントロールできない遥か彼方で動いているのでしょうか、
 それとも、意外にも手の触れるところを流れているのでしょうか。
 
 もしかしたら、と、あなたのこころをのぞいてみてください。
 そこであなた独自の時間を見つけられたなら、しめたものですね。


<第0444号 2009年2月15日(日)>

       あなたに 7

         目を閉じてみると
         真っ暗が
         わかる
         光はあなたを知らぬふり
         
         耳をふさいで見ると
         しじまが
         わかる
         音はあなたをすりぬけて
         
         光も音も
         抱きしめてはくれない
         あなたに対して
         
         ふさぐことすらできないこころは
         だからどんなに
         まっすぐかわかるだろう


   * 挿一輪 *

 光も音も波です。
 光の波長を目がとらえて、脳が映像にしますし、
 音もまた、音波を耳が捉えて聞こえる形に変換します。
 
 見たくないものは、目を閉じれば入ってきませんし、
 聞きたくないものは、耳をふさげば静寂になります。
 自分の意思で選ぶことができます。
 
 自分の気持ちで選ぶことができるということは、
 逆にいうと、どんなに有意義なものでもシャットアウトしてしまいます。
 
 振り向かないあなたをそっと諭してくれる、
 じっとそばで見つめていてくれる、
 そんなおせっかいはいっさいしてくれません。
 
 では、こころはどうでしょうか。
 目や耳のように簡単にはふさげません。
 その場を立ち去ったとしてもいつまでも離れません。
 
 楽しいことはもとより、哀しいこと、辛いこと、心配ごとは、
 消えないばかりか、次から次へと生まれてきます。
 
 だからこそ、はじめからまっすぐにむきあう覚悟が必要です。
 そんなこころの特性を逆手にとって、
 生きる糧にできたなら、すばらしいですね。


<第0443号 2009年2月8日(日)>

       あなたに 6

         違っていることは
         のけものだろうか
         違っていることは
         個性だろうか
         
         違いに気がつくと
         隠れたくなるだろうか
         違いに気がつくと
         きらきらするだろうか
         
         違うということは
         生きているあなたを
         たしかめることだ
         
         違うということに
         あなたをかけるくらい
         いきいきすることだ


   * 挿一輪 *

 人と違うということは、とまどうことでしょうか。
 それとも、自分の価値を再確認することでしょうか。
 
 世界でたった一人のあなたにとって、
 考えてみれば、まったく同じ人など存在はしません。
 よく似た人や考え方が同じ人でも、
 個の形からいえば、かならずどこかが違っています。
 
 本来、比べることは、
 お互いの相違点を尊重する意味合いがあるように思います。
 でも現実は、妙に意識しあって打ち消しあったり、
 仲間はずれにしてしまう傾向があります。
 
 違っていることがストレスになり、
 人と同じ考え方や習慣、服装までも、
 どこかで強要する傾向になるのかもしれません。
 
 違うということがわかることで、
 それぞれの存在を唯一と尊重して、
 なおいっそう自分の個性を伸ばしてゆければ、
 これほどステキな生き方はないように思います。
 
 違っているということが、生きていくことのなかで、
 本当はとても大切なことだとかみしめながら、
 新たな毎日を見つけられたなら素晴らしいですね。


<第0442号 2009年2月1日(日)>

       あなたに 5

         雲には湧き立つところがある
         水には溢れるところがある
         聞いたことがあるか
         読んだことがあるか
         
         風にははじまるところがある
         声には振り絞るところがある
         だれかに教えられたか
         おとぎばなしに伝えられたか
         
         おかしそうに笑ってもいい
         関係ないと
         横をむいてもいい
         
         でもいつか
         かならず出会うことがある
         あなたの生きているあいだに


   * 挿一輪 *

 伝説やおとぎばなしを聞いたことがありますか。
 
 小さいころにお母さんのひざの上で絵本を読んでもらったり、
 田舎のおじいちゃんやおばあちゃんに、
 おもしろい話、怖い話、まるでいまそこで見てきたように、
 話してもらったことが忘れられません。
 
 子どものころは信じていた話も、
 大きくなるにつれどこか賢しくなって、
 作り話だよと話すこともなくなってきます。
 
 たしかに伝説やおとぎばなしは、
 そのままの話は信じられないことが多いのですが、
 長いあいだ言い伝えられてきたことには、
 それなりの伝言が埋め込まれているように思います。
 
 道徳とか教訓とか固い話もありますが、
 昔から人間が抱いてきた夢やロマンが、
 語りの中にちりばめられているのかもしれません。
 
 いつかそんな場面に出会うことがあったなら、
 その時に、キラリと光る輝きを逃すことなく
 生きるための糧にしてゆけば、
 あなたの毎日に新しい発見があるかもしれません。
 チャンスは、巡るときにしっかりとつかみたいですね。



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