2012年10月のこびん

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<第0637号 2012年10月28日(日)>

       そのままの

         四角い窓から空を見上げると
         しかくい青
         
         板の丸い穴から空を見上げると
         まるい青
         
         私の目から空を見上げると
         わたしの青
         
         いろいろな「の」がついても
         青はどこまでも
         そのままの青


   * 挿一輪 *

 いつも自分がどう見られているか、
 ふと気になることがあります。
 
 多くは、小さなトラブルから自分が誤解を受けたときや、
 疲れたりして自分に自信が持てなくなったときでしょうか。
 
 他人からはその人のものさしで自分が見られます。
 四角いものさし、丸いものさし。
 
 でも、それは自分自身のほんの一面にすぎません。
 
 青空が、どんなときでも枠のない空であるように、
 自分は、どんなときでも自分であると信じて、
 しっかりと生きてゆきたいものです。


<第0636号 2012年10月21日(日)>

       陽ざしのない秋

         陽ざしのない秋
         にびいろに光る生姜糖
         ここがわたしの故郷に似て
         
         ひそやかな虫のなきごえ
         やわらかな闇
         ひらかれた哀しさ
         
         あなたの大好きな場所を
         涙をふくらませられる場所を
         どこまでも探しにいって
         
         境界線が溶けた空
         染み出してくる明日の時間
         オシロイバナの黒い種
         
         重なる落葉の文字
         後れ毛のほつれるすすきの穂
         匂い散る金木犀の星


   * 挿一輪 *

 曇って肌寒い日や雨の日は陽ざしがない分、
 秋の寂しさがいっそう感じられます。
 
 でもそんな一日だからこそ、
 身近な一場面に小さな秋を見つけてみたくなります。
 
 光と影の区別もなく、やわらかなグレーに包まれた秋。
 あなた自身との境界もあいまいになって、
 溶けるように秋とひとつになれるのではないでしょうか。
 
 晴れていても曇っていても雨が降っていても秋を感じるように、
 生きているどんな場面でも自分をしっかりとみつめたいですね。


<第0635号 2012年10月14日(日)>

       マジック

         点を描いたら
         ポンポンポンとはねた
         
         線を引いたら
         キキーと声を上げた
         
         絵を塗ったら
         サッサッサッと走った
         
         漢字を書こうとしたら
         ウッと黙った
         
         直立不動の姿勢から
         冷や汗のような染みが
         ゆっくりと広がった


   * 挿一輪 *

 蛍光ペンに比べるとどこか地味な存在のマジック。
 職場や学校で使われるのも、ほとんど事務的なことに。
 
 でも、意外とこころ躍るのが8色入りのセット(ハイマッキー)。
 子どものころ、36色入りの色鉛筆とともに妙に憧れていました。
 
 そんなマジックも使い方で不思議なおしゃべりをします。
 画用紙や模造紙、木材やアクリルボードなど、
 書く相手の素材によって、違う声色を出して楽しませてくれます。
 
 身近な文房具にもいろいろな声があり、
 あなたとの会話があるのかもしれませんね。


<第0634号 2012年10月7日(日)>

       休日

         あきの
         おおきな
         そらの
         ました
         
         わたしの
         きのうまでの
         うずくまった
         こころを
         
         そっと
         ひだまりに
         ひろげてみる
         
         なつかしい
         ひなたの
         においが
         
         ほのかに
         ほのかに
         かおりだす
         まで


   * 挿一輪 *

 晴れた秋の一日はさわやかです。
 
 からだに残った疲れや気がかりなことなどまでが、
 湿度の低い大気や高い空に吸い込まれて、
 まるで自分の輪郭がなくなり、
 秋の大気と一体になったように気持ちが落ち着きます。
 
 水は人間にとってとても大切なものですが、
 その水を、
 常に滞ることなく循環させることが、
 生きてゆくためにいちばん大切なことだといいます。
 
 からだのなかだけではなく、
 さわやかな秋の大気と循環させることで、
 深く大きな気持ちになれることを願います。




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