<第0641号 2012年11月25日(日)> 出会い どこまでも どこまでも つづく まっしろな羊の群 泳いでいるのは 黄金色の太陽 いつまでも いつまでも とぎれない 色とりどりの人の群 たたずむのは 黄色いバラ 視線をあわすことの ほんの一瞬のやさしさが わすれられて おいやられて だからこそ はげしいほどに 固い靴を脱いで 重い帽子をはずして まっすぐ まっすぐ 一本の光る柱になるのは わたしのいのち * 挿一輪 * 出会いは突然です。 出会うべくしてそこにいたとか、偶然の産物だとか、赤い糸だとか。 運命ということばがささやかれることもありますが、 それはみな、後から振り返って思い当たる理由付けかもしれません。 出会うときは、前触れもなく、一瞬にあなたをとらえます。 ふと、空を見上げたときの、ひつじ雲と、のぞく太陽と。 ふと、行きかう人々の向こうにかいまみる、塀のすきまの花に。 気がついたものだけが、出会い、その一瞬に立ち止まり、 その印象が強ければ強いほど、 一瞬は記憶にとどまって、生涯忘れられなくなります。 出会いは消えません。 たとえ一時的に忘れても、なにかのおりにふと浮かんできます。 そして生きている限り、 それはあなたにとって、もっとも大切な宝物のひとつになるはずです。 <第0640号 2012年11月18日(日)> だるまさんが 桜の落葉がかさり だるまさんがころんだ 小石の影がせのび だるまさんがころんだ まつ毛の涙がぽたり だるまさんがころんだ わたしのいのち いのちのわたし ちっとも気づかない わたしが気づかない こんどもまた鬼 いつまでも鬼 だるまさんがころんだ * 挿一輪 * 動いているものには目が反応しますが、 止まっているものは見過ごしがちです。 たとえ足元にあっても、ひっそりとたたずんでいるもの。 ふと見つめた、視線の先にあるもの。 そこですこしでも動いたりすれば気がつくのですが、 たとえ視野に入っていたとしても、 見えていながら見ていないものがほとんどなのかもしれません。 でも、ずっと動いていないように思えても、 目を離したすきにそっとからだを動かし近づいているのかもしれません。 ほら、「だるまさんがころんだ」 ふと目をやると少し近づいている気がしませんか。 「いま」という時間はいつも一緒に寄り添っていますが、 「あす」という時間は気がつかなくても確実に近づいています。 しっかりと見張っていないと、 知らない間に背後にすり寄って、 いつのまにかつかまってしまうかもしれませんね。 <第0639号 2012年11月11日(日)> ひとつ ぎんなんひとつ ひだまりひとつ まつかさひとつ ひだまりひとつ ぶらんこひとつ ひだまりひとつ おもかげひとつ ひだまりひとつ あなたもひとつ ひだまりひとつ こがらしひとつ ゆうぐれひとつ * 挿一輪 * 秋の陽だまりは静かです。 昼間でも少し斜めの陽光が、 小さなものまでもわかるように影を伸ばします。 もしかしたら音すらも小さな影で教えてくれそうな雰囲気です。 陽だまりには気がつけばたくさんの影があります。 それだけたくさんのものが存在しています。 ふだん気がつかないものでも、 じっと見れば見るほどみつけられます。 そのなかでたったひとつ、 あなたのいちばん好きなものをみつけてみてください。 小石が目にとまりましたか? それとも風に押された落葉ですか? ふと小さな場面を思い出すかもしれません。 その時の忘れられないひとことかもしれません。 小さな「ひとつ」をそっとみつめることで、 そこにあなた自身が見えてくるかもしれません。 そう、あなたも陽だまりのなかで小さな影をつくっています。 陽だまりで影をつくる仲間たち。 秋はあなたにそんな姿を教えてくれる季節です。 <第0638号 2012年11月4日(日)> 溝 靴の底の溝は すり減って まるくなる 道路の溝は 土が詰まって あさくなる 人と人との溝は どんなに歩き回っても どんなに気持ちを詰めても 哀しいくらいに 埋まらない * 挿一輪 * 溝は埋められると機能が果たせません。 靴の溝がなくなるとすべって危ないし、 道路の溝が埋まってしまうと水があふれてしまいます。 時間がたつにつれて、 靴の底はツルツルになり、 道路の溝は土や捨てられたもので埋まってしまいます。 人と人との関わりはどうでしょうか。 小さな行き違いでできた小さな溝は、 埋まるどころか逆に深くなってしまうことが多いのです。 時間という詰め物がいつのまにか埋めてくれる場合もありますが、 たいていの場合、 かえって溝を広げてしまうのではないのでしょうか。 必要な溝は埋めないようにメンテナンスが必要ですが、 人と人との溝は、 見えるか見えないかほどの浅いのうちに、 手早く修復をしたいものです。 |
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