2013年4月のこびん

戻る


<第0663号 2013年4月28日(日)>

       じっと

         うみにつつまれて
         うみかぜにだかれて
         まっすぐに
         うみをみつめる
         
         そらと
         うみとの
         さかいめの
         すいへいせんのあたりから
         りくと
         うみとの
         さかいめの
         なみうちぎわのあたりまで
         
         ことばもなく
         ただじっと
         まっすぐに
         うみになる


   * 挿一輪 *

 なにもしないでただじっと海を見つめている、
 そんなことがありますか。
 
 波のくりかえしくりかえし押し寄せてくる様を、
 見続けているのもよし、
 水平線あたりに浮かぶ動物に似た雲のかたちが、
 少しずつ変わってゆくのをみるのもよし、
 定置網を引く漁船や飛ぶかもめを見るのもよし。
 
 ただ海辺でじっと見ているだけなのに、
 いつまでも飽きもしません。
 
 海を見ているつもりが、
 いつのまにかいろいろなことを思い考え、
 こころの境界線がなくなって、
 潮騒と一体になったような気になります。
 
 なにもしないでただじっと。
 そんなときこそいつもかまえているなにかから、
 開放される瞬間なのかもしれませんね。


<第0662号 2013年4月21日(日)>

       たんぽぽ

         小さな太陽が
         ポップコーンのように
         はじけた
         はじけた
         
         きらきらと
         光る綿毛の
         ひとつひとつを
         
         どこまで飛ばそう
         どこまで飛ばそう
         
         こんどの
         海風と
         相談しよう


   * 挿一輪 *

 春先のようやく緑がではじめたころ、
 率先して咲いていた黄色くかがやくたんぽぽたち。
 
 そんなたんぽぽたちは、
 他の花が咲き競いはじめた頃には、
 もう綿毛になってその種子を遠くに飛ばす準備をしています。
 
 キラキラ光る銀白色の格子のドーム。
 ここからたくさんの綿毛が飛び立ち、
 新しい黄色いメダルが点々と散らばる光景になります。
 
 踏まれても踏まれても強く咲き続けるタンポポたち。
 続くことの大切さ、強さを少しでもいただきたいものですね。


<第0661号 2013年4月14日(日)>

       掲示板

         春の空には
         光る竹とんぼ
         
         だれが
         まわして
         飛ばしたの
         
         濡れた土の匂いと
         開きはじめた
         やわらかな緑の匂い
         
         つまさきから
         あたままで
         
         春は等身大の
         町内掲示板です


   * 挿一輪 *

 足元から頭上まで、
 季節は春らんまんです。
 
 殺風景だった灰色の道の傍らにも、
 緑の草たちがびっしりとその芽を伸ばし始めています。
 
 そのひとつひとつが、
 春の訪れを告げる小さな掲示板ですね。
 
 さて、
 掲示板のメッセージは何でしょうか。
 
 立ち止まって思いをめぐらすのも、
 ならんであなたのメッセージを書き残すのも、
 春の陽だまりには似つかわしいようです。


<第0660号 2013年4月7日(日)>

       とけい

         あたらしいとけいに
         あたらしいでんちをいれる
         
         うごきはじめたのは
         あたらしいじかん
         しんせんな
         はるのかぜのじかん
         
         あたらしいとけいが
         あたらしいでんちでうごく
         
         とけいのなかに
         じかんがねむっていたのだろうか
         でんちのなかに
         じかんがねむっていたのだろうか
         
         あたらしいわたしに
         あたらしいじかん
         
         じかんがねむっていたのは
         そう
         わたしのいのちのなか


   * 挿一輪 *

 じかんはどこからうまれるのでしょうか。
 新しい時計に電池を入れてリセットボタンを押したときから、
 突然動き出すのでしょうか。
 
 いえいえ、
 じかんは時計のなかにはありません。
 じっと見つめているあなたのなかにあるのです。
 
 動き出した目の前の時計はだれのためにあるのでしょうか。
 そう、
 見つめているあなたのためにあるのです。
 
 あなた自身で創り出した時間。
 だからこそ自分のために大切にしたいですね。




このページのトップに戻る

Copyright© 2013 Kokoro no Kobin