2013年8月のこびん

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<第0680号 2013年8月25日(日)>

       なみだ

         見ていなければいけない
         たったいま
         わたしの眼で
         
         ほんのせつなでも
         眼を離してはいけない
         しっかりと
         でも
         
         なみだ
         おまえが邪魔をする
         わたしが見続けることを
         
         なみだ
         どうして見せてくれない
         あふれる泉が
         やさしい波紋をとどめもなく
         
         わたしから
         しばらく隠したいから
         しばらく遠ざけたいから
         
         それだけのために
         なみだ
         あふれてくる


   * 挿一輪 *

 なみだがあふれて止まらないことがあります。
 どうしてこんなになみだがでるのかと不思議なことがあります。
 
 きっと理由があるのです。
 
 涙の幕を張って、
 はっきりと見せたくないものがあるのです。
 
 眼をおおって、
 しばらく外の世界から、
 隠す必要があるのです。
 
 だから、
 なみだがあふれるときは、
 なみだが自然に止まるまで、
 そのままでいてください。
 
 きっと、
 涙は、
 あなた自身を守るために止まらないのですから。


<第0679号 2013年8月18日(日)>

       あなたはいま

         あなたはいま
         だれといますか
         
         だれもいないのなら
         目をつぶって
         耳を澄ませてみませんか
         
         あなたはいま
         だれかに問いかけていますか
         
         わからないのなら
         静かに目をあけて
         耳を澄ませてみませんか
         
         いちばんちかくにいる
         ほら
         いのち
         
         見えますか
         確かめられますか
         寄り添えますか
         
         あなたはいま
         どれだけあなた自身ですか
         
         もう一度
         問いかけてみませんか


   * 挿一輪 *

 日常のなかで、
 いちばん忘れてしまうことはなんでしょうか?
 
 それは、
 問いかけです。
 
 なぜならば、
 問いかけることを忘れても、
 気がつかずにすぎてしまうからです。
 問いかけることを忘れても、
 生活に支障はなく、困らないからです。
 
 でも、だんだんこころがやせてきます。
 からだはやせてくると目に見えるのでわかるのですが、
 こころは見えないのでわかりません。
 
 こころをいきいきと保つには、
 問いかけが必要です。
 
 必ずしも答えを出す必要はありません。
 大切なのは、問いかけです。
 
 もし、すでに答えが出ていたとしても、
 もう一度、問いかけてみてください、
 
 あなた自身から生まれた、問いかけを。


<第0678号 2013年8月11日(日)>

       あなたが好きです

         あなたが好きです
         あなたが好きです
         
         まわりのいのちに
         そういってまわろう
         
         暑さのなかで
         立ち尽くす木立に
         
         鮮やかな花を求める
         一羽のアゲハに
         
         あなたが好きです
         あなたが好きです
         
         そういいながら
         立ち止まり呼び止めよう
         
         静かに座っている
         神社のネコに
         
         朝のベランダで
         鳴き交わす鳥に
         
         あなたが好きです
         あなたが好きです
         
         あなたがいつかそういわれたら
         そばのいのちからそういわれたら
         
         どんなにうれしいだろう
         どんなにいとしいだろう
         
         だからあなた自身も
         まっすぐに伝えよう
         
         あなたが好きです
         あなたが好きです


   * 挿一輪 *

 だれでもいいです。
 樹でも花でも、
 家族でも、
 友だちでも、
 飼っている愛犬でもいいです。
 
 身近ないのちに、
 
 あなたが好きです。
 
 そう声をかけてみてください。
 
 不思議なエネルギーがあなたのなかに湧いてきて、
 それはあなた自身にも帰ってくるはずです。
 
 さあ、声を出して。
 
 あなたが好きです。


<第0677号 2013年8月4日(日)>

       はだか

         ころもをとると
         ひとは
         はだか
         
         くもをとると
         そらは
         はだか
         
         きのうをとると
         きょうは
         はだか
         
         なんにも
         はずかしいことなど
         これっぽっちも
         ありはしない
         
         まわりに
         だあれも
         みていなければ


   * 挿一輪 *

 人間が衣を身につけ始めたのは太古の昔のようです。
 
 それまでは他の動物と同じ、
 はだか。
 
 衣は体温の調節や外敵からの防御に役立ち、
 より厳しい環境で適合できるようになりました。
 
 しかし、
 衣をつけるようになって、
 逆に自然界と対立するようになり、
 同じ人間のあいだでさえ構えるようになってしまったようです。
 
 「はだかのつきあい」
 ということばまでできてきたほどなのですから。
 
 鎧とまでいわなくても、
 常に構えていなければならない現代では、
 からだだけではなくこころまで、
 衣は決して脱ぐものではありませんね。
 
 でも、
 まっさらな自分に戻って、
 まわりのものに接してみると、
 いかに自分が過大な衣を身につけていたかがわかります。
 
 少しでも、
 余分な衣を身にまとわないで、
 身軽な自分で接してゆけたならいいですね。




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