2013年11月のこびん

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<第0693号 2013年11月24日(日)>

       想い手

         ささえられている
         忘れてしまっている手に
         
         ささえられている
         見ようともしない手に
         
         いつだってそうなんだ
         あとになって気がつくんだ
         
         かなしいほど
         まっすぐにのびる
         青空のひこうきぐも
         
         首が痛くなるほど見ていたのに
         風に消されたら
         もう忘れてしまっている
         
         ふと
         だれかに呼び止められた
         
         ふと
         せなかに陽だまりを感じた
         
         いつか
         気がついてくれればいい
         
         でも
         忘れてしまってもいい
         
         思い出も
         想う手のなかにある


   * 挿一輪 *

 人はいつもだれかにささえられています。
 気づいている、
 気づいていない、
 に、かかわらず。
 
 思い出は、
 そんなてのひらに、
 ひっそりと乗っているのかもしれません。
 
 思い出は、過去。
 ささえられている手は、現在。
 待ち続ける手は、未来。
 
 でも、
 その手は、
 どれもおなじ手なのです。


<第0692号 2013年11月17日(日)>

       今日を

         てのひらに
         今日という日の
         始まりを
         のせる
         
         まだ
         軽くて
         小さくて
         眠るように
         やさしくて
         
         てのひらに
         のせた今日を
         ゆったりと
         ころがしてみる
         
         朝の
         真新しい
         卵黄の光が
         ため息のような
         鼓動をはじめる
         
         この
         たったひとつの
         ゆだねられた
         宝石を
         
         むだにしないように
         いつくしむように
         今日を
         生きる


   * 挿一輪 *

 朝。
 
 今日という日が始まります。
 
 無垢な一日の始まりです。
 
 あなたの一日の始まりです。
 
 すべてがあなたにゆだねられています。
 
 さあ、
 どうすごしましょうか。


<第0691号 2013年11月10日(日)>

       脇役

         足下の影を
         そっと踏んで
         気がついたのだろうか
         
         背中の
         あたたかさで
         気がついたのだろうか
         
         ふっと
         明るくなったから
         気がついたのだろうか
         
         陽がさしてきたのだ
         歩くわたしに
         ひとすじに
         
         思わず見上げて
         声をかけた
         
         太陽の光のために
         そっと道をひらいた
         無口な雲たちに


   * 挿一輪 *

 朝から泣きそうな空模様。
 
 でもしばらくすると、
 その厚い雲の隙間から陽光がこぼれてきました。
 
 思わず空を見上げます。
 まぶしい陽の光とまだ空をおおっている雲と。
 
 考えてみると、
 あの雲が空をおおっていたおかげで、
 こうしてさしてきた陽のありがたさが引き立ちました。
 
 嫌われ者の灰色雲にも、
 たしかな役割があったのでしょう。
 
 太陽の恩恵はだれでも気がつきますが、
 それを演出する雲の恩恵には気がつきにくいものです。
 
 気がつかれずにそっとサポートしてくれる、
 そんな名脇役達に声をかけられたら最高ですね。


<第0690号 2013年11月3日(日)>

       必要と

         必要とされること
         ありますか
         
         手伝ってほしい
         頼まれますか
         
         聞いてほしい
         耳をかたむけますか
         
         笑顔がみたい
         ほほえみますか
         
         必要とされること
         ありますか
         
         一瞬躊躇して
         でも
         立ち止まれますか
         
         もっと他のこと
         大切ですか
         
         すこしでも先
         進みたいですか
         
         必要とされること
         ありますか
         
         必要としている背中を
         そっとのぞいたことが
         ありますか


   * 挿一輪 *

 あなたは、
 だれかに必要とされていることがありますか。
 
 どんな小さなことでも、
 ほんの一瞬のすれ違いでも、
 手助けできることがありますか。
 
 ところで、
 あなたは、
 だれかを必要とすることがありますか。
 
 そばにいてほしいなと、
 ふとほほえんでほしいと、
 思ったことはありませんか。
 
 あなたの背中は、
 あなたには見ることができません。
 
 だれかの背中を、
 あなたは見ることができます。
 
 必要とされること。
 必要とすること。
 
 ひとつひとつ、
 ていねいに確かめてみたいですね。




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