2013年12月のこびん

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<第0698号 2013年12月29日(日)>

       樹は教えてくれる

         樹は教えてくれる
         風を
         
         樹は教えてくれる
         雨を
         
         樹は教えてくれる
         陽を
         
         樹は教えてくれる
         詩を
         
         樹は教えてくれる
         息を
         
         樹は教えてくれる
         鳥を
         
         樹は教えてくれる
         時を
         
         樹は教えてくれる
         今を


   * 挿一輪 *

 大きな樹の下に立っていると、
 いろいろなことを教わります。
 
 きっと、
 こうして見上げている自分より、
 ずっと前から生きていたであろう樹。
 
 自然の大先輩に、
 教えてもらうことは、
 無限にあるような気がします。
 
 ですから、
 教えてもらうのは樹だけではありません。
 自然のなかのすべてが師になります。
 
 あなたは、
 どんな自然に教えてもらえるでしょうか。
 
 ふと足を止めて、
 身のまわりの声に耳を傾けてみたいですね。


<第0697号 2013年12月22日(日)>

       冬至

         太陽の光に
         種を蒔く
         
         朱色に染まった
         朝の自分に
         種を蒔く
         
         冬至
         新しい太陽の始まる一年
         
         さあ
         今日こそ
         たしかないのちを
         育てはじめる日


   * 挿一輪 *

 冬至です。
 一年でいちばん昼間の短い日です。
 弱まった太陽の力が復活を始める日です。
 
 古代から、
 太陽を崇める文明は、
 この日を再生の日として大切にしてきました。
 
 新しい年は、
 冬至から始まるのが自然のように思います。
 
 正月には10日余りありますが、
 一足早く、
 新しい収穫へ向けての、
 自分の種まきを始めてみましょうか。


<第0696号 2013年12月15日(日)>

       いいな

         いいなと
         思った絵は
         まえで
         呼び止めてくれる絵
         
         いいなと
         思った樹は
         ふいに
         みあげてしまう樹
         
         いいなと
         思ったひとは
         いまを
         生きているひと


   * 挿一輪 *

 あ、いいな。
 そう思うことがあります。
 
 初めて出会った人と目が合った瞬間。
 顔見知りの人でもいつもと違う面がわかったとき。
 
 ふと入った美術展である絵の前に立ち止まったとき。
 街を歩いていて耳に飛び込んでくる鳥の鳴き声。
 
 そして、樹。
 見上げるほど大きな樹。
 
 あ、いいな。
 しばらくたたずんでいて、
 ふと我に返ると、
 こころがしんと澄んでいて。
 
 なにかが呼びかけて、
 自分のなにかがそれにこたえたのでしょうね、きっと。
 
 あ、いいな、
 と。
 
 今日一日、
 いくつ、
 出会えるでしょうか。


<第0695号 2013年12月8日(日)>

       いま

         そっと
         声を
         抱きたいのだ
         
         師走の
         陽だまりに
         腰を下ろし
         
         じっと
         見つめる
         澄んだ空気の
         
         にじみでる
         光のプリズム
         てのひらに
         
         さあおいで
         ここにおいで
         もっとそばに
         
         凍りつく
         すぐ前の
         まだ震えている
         
         いのちの
         声を
         抱きたいのだ


   * 挿一輪 *

 いのちには生きる使命があります。
 
 権利とか価値とかいう概念の世界を超えて、
 本来備わっているものです。
 
 いのちには入れ物によりそれぞれの形がありますが、
 その根源は同じものです。
 
 特権などなく、
 ましてその見かけの特権を振り回して、
 他のいのちを支配してよいことなどありません。
 
 人がその人らしく生きるように、
 すべてのいのちがそのいのちを生ききるように、
 もう一度考えてみたいですね、
 身のまわりの日常のなかで。


<第0694号 2013年12月1日(日)>

       12月

         窓のすきまから
         しのびこむ風にも
         ゆれるように
         
         年の初めの
         丸まったからだも
         すっかりのびきって
         
         身をかるくした
         残り一枚の
         カレンダー
         
         11枚の悲しみを
         どこかに捨てたつもりでも
         11枚の喜びを
         どこかにしまったつもりでも
         
         消し去られた日常が
         午後4時の西陽のなかで
         そっとてのひらをあわせている


   * 挿一輪 *

 月めくりのカレンダーも最後の一枚になりました。
 
 丸まったカレンダーをのばしてつるした日から、
 もう11ヶ月がたってしまったなんて。
 
 振り返ると悲喜こもごもの時間。
 忘れられない場面もあれば、
 忘れてしまった時間もあります。
 
 あと一ヶ月。
 それとも、
 まだ一ヶ月。
 
 残った一枚分の時間を、
 しっかりと過ごすことができるなら、
 充実した一年だったと、
 後々まで記憶の残る年になるかもしれませんね。




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