2014年2月のこびん

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<第0706号 2014年2月23日(日)>

       残り雪

         残り雪が
         泣いている
         音もたてずに
         泣いている
         
         あんなに白くやわらかに
         空のはてから降りてきて
         あなたのほほえみ見るために
         遠いはてから降りてきて
         
         けれども
         冷たいひとひらは
         そんなあなたが見つからず
         道の端に凍りつき
         
         こぶしほどの
         残り雪が
         とめどもなく
         泣いている


   * 挿一輪 *

 なにかを期待しているときはワクワクします。
 
 実際に起こる時より、
 想像しているときのほうが、
 よりワクワクします。
 
 そして、
 期待通りにならなかったとき、
 その落胆はより大きくなります。
 
 でも、
 たとえ思い通りにならなくても、
 期待するワクワク感はなくさないでください。
 
 悲しくてこぼす涙も、
 いつかはあたたかな陽だまりに輝くはずですから。


<第0705号 2014年2月16日(日)>

       リセット

         名前は
         とても便利なもの
         たとえば「椿」
         花の名前を
         聞いただけで
         
         でも
         その名前を消して
         あなたの
         大好きな人に
         この花を
         伝えるのなら
         
         ずっと昔の
         名前のつく前の
         花のそのままを
         じっと
         見つめて
         
         あなた自身の
         ふと湧き上がってきた
         想いだけで
         つむぐことば
         なに


   * 挿一輪 *

 ものの名前は便利です。
 花の名前も良く知られている花なら、
 すぐにイメージが浮かびます。
 
 でも、
 名前がひとつあると安心して、
 たとえ目の前にそのものがあっても、
 頭のなかでその名前を浮かべて、
 見ようとしなくなってしまいます。
 
 花の名前だけではなく、
 一度イメージされた概念は、
 自分の目で見ることを妨げてしまいます。
 
 だれかの目で見るのではなく、
 自分自身の目で見つめなおす、
 そんな習慣を身につけたいものですね。


<第0704号 2014年2月9日(日)>

       けものみち

         道が
         ひとつなら
         迷うことはない
         
         踏み跡が
         いくつもあるから
         迷うのだ
         
         生きている自分は
         たったひとつだから
         
         欲張らずに
         ひとつだけだよと
         さとされる
         
         目に涙いっぱい
         だだっこのように
         
         むこうが
         見通せない
         けものみち


   * 挿一輪 *

 進むべき広野には、
 無数の踏み跡があります。
 あなたはどれでも選べますが、
 一度選んだら後戻りはできません。
 
 ゲームのシチュエーションのようですが、
 実は毎日生きているわたしたちの日常も、
 この選択の連続に似ています。
 
 ほんとうはいくつか試して、
 自分にいちばん合う道を選択したいのですが。
 
 生きることは選択の連続。
 ならば選んだ道を振り返ることなく、
 しっかりと踏みしめて歩いてゆきたいですね。


<第0703号 2014年2月2日(日)>

       抱きしめる

         樹を
         抱きしめる
         樹の幹を
         抱きしめる
         
         樹と
         抱きしめる
         木の根と
         抱きしめる
         大地をしっかりと
         抱きしめる
         
         樹と
         抱きしめる
         木の枝と
         抱きしめる
         空に手をさしいれて
         抱きしめる
         
         樹を
         抱きしめる
         この世界を
         抱きしめる
         
         ずっと
         ずっと
         抱きしめる


   * 挿一輪 *

 樹の太い幹に手をまわして、
 樹を抱きしめたことがありますか。
 
 冬の陽だまりの幹はあたたかく、
 夏の木陰の幹はひんやりとして、
 しばらくそのまま、
 樹の幹とくっついていたくなります。
 
 大地に根を張り、
 空を支えているような樹。
 
 触れているだけで、
 安心するのかもしれませんね。




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