2016年3月のこびん

戻る


<第0815号 2016年3月27日(日)>

       ひらく

         花のつぼみのように
         ひらくのなら
         
         たしかめるように
         ひらくのなら
         
         呼ばれるように
         ひらくのなら
         
         つつまれるように
         ひらくのなら
         
         きっと
         ことばは
         うつくしいはず


   * 挿一輪 *

 ことばを見ることができたなら。
 
 だれかにかけられたことば、
 自分が発したことば、
 どんなふうに見えるのでしょうか。
 
 鏡に映すこともできず、
 さわって感触を確かめることもできず。
 
 だからこそ、
 大切に扱ってゆきたいですね。


<第0814号 2016年3月20日(日)>

       咲く

         花が咲くには根が必要です
         
         花の咲かせかたばかり聞くわたしに
         にっこり笑ってその人は答えた
         
         花が咲くということは
         微笑むということは
         
         足元に目を落とすと
         たんぽぽの花が笑っていた


   * 挿一輪 *

 笑顔は花のようです。
 
 にっこりと笑うと一輪の花に見えます。
 
 笑うためにはどうすればいいでしょう。
 花を咲かせるためにはどうすればいいでしょう。
 
 花が咲くには根が必要です。
 ひとの根はどこにつながっているのでしょう。
 
 だれもがそれぞれの花を咲かせることができたなら。
 だれもがそれぞれの花を見守れたら。
 
 ひとは花を咲かせるために生まれてきたような気がします、
 地上のたくさんの花たちのように。


<第0813号 2016年3月13日(日)>

       つつむ

         つつむ
         きっちりとつつむ
         
         つつむ
         ふんわりとつつむ
         
         つつむ
         てばやくつつむ
         
         つつむ
         たのしみながらつつむ
         
         つつむ
         その人の手に
         あけるときの手に
         思いをはせてつつむ
         
         つつむ
         あけるまでの
         近いような遠い時間に
         ぬくもりをこめてつつむ


   * 挿一輪 *

 毎日の生活のなかで、包むことはあまりないかもしれません。
 
 用が済んだものをしまっておくために包むことや、
 だれかに送るためにつつむことくらいでしょうか。
 
 包む中身もいろいろですが、包むまわりのものも紙あり布あり、
 色、好みや大きさ、形にあわせて変わります。
 
 特に贈り物を自分の手で包装するときは、
 慣れないので難しいのですが、その工夫がまた楽しいものです。
 
 届いたときの相手の表情や、包装をあけるときの様子など、
 思い浮かべながら包むのも良いものですね。


<第0812号 2016年3月6日(日)>

       啓蟄

         もぞり と
         きみがうごく
         
         まだ固く冷たい
         土のなかで
         
         くるり と
         きみがうごく
         
         まだ葉陰もない
         樹の幹のなかで
         
         呼ばれたのだ
         きみにはわかっている
         
         ふっ と
         だれかがわらう
         
         だれひとりとして
         その姿をみたことがない
         いつもの春が


   * 挿一輪 *

 啓蟄(けいちつ)は虫たちが動き出すころです。
 
 暗い大地や樹のなかで、ある日ふっと目覚めるのです。
 
 虫たちの目覚めを誘うのはだれでしょう。
 
 わたしたち、人間のなかにも、その感覚はあるのかもしれませんね。




このページのトップに戻る

Copyright© 2016 Kokoro no Kobin