2016年7月のこびん

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<第0833号 2016年7月31日(日)>

       せみしぐれ

         大きな樹の下で
         わたしは
         そのまま
         せみしぐれ
         
         歩き出すと
         ついてくる
         どこまで
         せみしぐれ


   * 挿一輪 *

 梅雨が明けると夏本番です。
 
 せみがなきはじめ、
 気がつくと、うるさいほどのせみしぐれです。
 
 一度、音で頭のなかがいっぱいになると、
 しばらくは耳鳴りのようになりやみません。
 
 見あげると、夏の空。
 長い夏の始まりですね。


<第0832号 2016年7月24日(日)>

       見えるもの

         みちばたに
         ぽつんと
         咲いている花を見ると
         かなしくなる
         
         みちばたに
         ぽつんと
         咲いている花を見ると
         うれしくなる
         
         みちばたに
         ぽつんと
         咲いている花は
         そのまま わたし


   * 挿一輪 *

 見えるものは、その時々の自分を反映しています。
 
 かなしいときにはかなしいものが目につき、
 うれしいときにはうれしいものが飛び込んできます。
 
 たとえ同じものを見たとしても、
 その時の気持ちによって見え方が異なってきます。
 
 目の前の景色はひとつでも、
 ほんとうは、見ている人の数だけあるのかもしれませんね。


<第0831号 2016年7月17日(日)>

       こころ み

         こころみ
         って
         ためすこと
         
         でも
         ほんとうは
         こころ み
         かもしれない
         
         こころ
         みてみたいから
         こころみ
         
         だれの
         こころが
         みえるのだろう


   * 挿一輪 *

 ひとは好奇心旺盛です。
 
 なにかを試してみたくて仕方がありません。
 
 特に、見えそうで見えないものが気になります。
 
 見ようと思えば見えるもの。
 見ようと思っても見えないもの。
 
 区別がつけばいいのでしょうが、
 そこでうろうろと迷ってしまいます。
 
 きっと、こころがあるからでしょうね。


<第0830号 2016年7月10日(日)>

       ゆり

         ゆれる
         ゆれる
         触れるような風にゆれる
         
         ゆれる
         ゆれる
         ささやかな問いにゆれる
         
         ゆれる
         ゆれる
         黄色い涙がほろりゆれる


   * 挿一輪 *

 ゆりの花は遠くからでも目につく花です。
 
 夏の木陰に真っ白な花を見かけるとはっとします。
 香りも強く、南国が原産の花ということも納得できます。
 
 花が大きく、風によくゆれるので、
 ゆり、という名前がついたと言われます。
 
 わずかの風にもゆれるのは、ひとのこころのようですね。


<第0829号 2016年7月3日(日)>

       ねがう

         ベランダの手すりを
         はねている
         早起きの
         鳥たち
         
         リズムに合わせて
         笹の葉の
         すれる音が
         のぼってくる
         
         声に出して
         そっとつぶやく
         結ぶばかりの
         短冊の願いごと


   * 挿一輪 *

 もうすぐ七夕です。
 
 願いごとを短冊に書いて、笹の葉に結ぶ七夕祭り。
 
 願いを持つということは、明日を信じることです。
 
 数え切れないほどの短冊が風に揺れ、ふと見あげるともう夏の空。
 
 ひとつひとつの願いがかなうといいですね。




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