2019年9月のこびん

戻る


<第0998号 2019年9月29日(日)>

       こえ

         こえがとどく
         あかとんぼのとまる
         みどりのやねをこえて
         ひつじぐものむれのように
         
         こえがとどく
         くろあげはのとまる
         あかいひがんばなをこえて
         うちよせるなみのように
         
         ピカッとひかるこえ
         フワッとつつむこえ
         クルッとおどるこえ
         
         しょうめんのひろいこえ
         よこむきのほそいこえ
         はねにのせたたからのこえ

         

   * 挿一輪 *

 耳に届けられた声は、聴いていないと素通りしてしまいます。
 
 人のからだは、意識しないと透明人間になるからです。
 
 聴きたい声、聴きたくない声、そして、無関心での通過する声。
 
 風を感じない人、空を見上げない人、足元を見ない人。
 
 宝物があふれている場所で、あなたはこれ以上何を探していますか?


<第0997号 2019年9月22日(日)>

       ふえ

         ためらわずに
         おもいっきり
         ふいたなら
         よいおとがひかる
         
         せすじをのばし
         まっすぐに
         いきをいれたなら
         とおくまでひびく
         
         ふえのことばは
         えんりょなどしない
         きれきれのこきゅう
         
         どこまでとどく
         あきぞらにぽかりうかぶ
         あのふたごのくもにまで

         

   * 挿一輪 *

 近所の保育園の先生の、先導の笛が聴こえます。
 
 リズミカルで迷いのない笛の音は、秋の空にまっすぐに飛んでゆきます。
 
 笛に吹きこむ息。
 
 毎日、わたしたちが意識せずに呼吸している息です。
 
 呼吸は、いのちの源(みなもと)。
 
 気持ち良い笛の音が響くような、自分の呼吸ができればいいですね。


<第0996号 2019年9月15日(日)>

       トンボ

         はねがほしい
         あたたかな
         やわらかな
         やくそくでつつんだはねではなく
         
         はねがほしい
         やいばのような
         あめざいくのような
         にじいろのいまにかがやくはねが
         
         かなしいふかを
         つつみとかすための
         とおいははのようなはねよりも
         
         いのりをあつめて
         かぜをうむための
         いのちのステンドグラスがほしい

         

   * 挿一輪 *

 いのちのかたちは、時に、はっとするほどの出会いを贈ってくれます。
 
 さ青の空に透けたトンボの翅を見ていると、いつまでも目を離せません。
 
 生きるために必要な最低限のもの。
 
 実は、それがいちばん美しいものなのでしょうか。


<第0995号 2019年9月8日(日)>

       だいすき

         だいすきなものは なに
         いつもみなれているものと
         どこかきもちがのびるもの
         とおりすぎてもさそうもの
         
         だいすきなことは なに
         じかんのすきまにもぐりこみ
         しらんぷりをよそおって
         いっしんふらんにできること
         
         だいすきってさけんでしまえ
         だいすきってはしってしまえ
         ふりむきざまにできるだけ
         
         だいすきってわかったときに
         よびつづけるのはなつかしい
         ふるさといろのかぜのこえ

         

   * 挿一輪 *

 大好きなもの、避けていませんか。
 
 大好きなこと、遠慮していませんか。
 
 大好きを、大事に大事にしまいこんでいませんか。
 
 後悔する前に、いますぐにでも、行動しましょう。
 
 そこで初めて、大好きが自分になり、そんな自分を大好きになります。


<第0994号 2019年9月1日(日)>

       ばんか

         わたしを
         だいてくれるひとは
         もうここには
         いない
         
         わたしを
         まってくれるひとは
         もうよんでも
         こたえない
         
         だきしめてほしいとき
         よびかけたいとき
         どうすればいいのだろう
         
         くもになってすをつくる
         ひかるきおくがつらなる
         あさつゆのゆりかごの

         

   * 挿一輪 *

 出会いは突然のことでしょうか。
 
 それとも、約束されたことでしょうか。
 
 はじめてのことなのに、どこかで見たことがあるような、既視感。
 
 いのちの記憶が、共有されているからかもしれませんね。
 
 夏の終わりの出会いは、だれなのでしょうか。






このページのトップに戻る

Copyright© 2019 Kokoro no Kobin