2020年3月のこびん

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<第1024号 2020年3月29日(日)>

       あおい

         あおいはなはそこにある
         あおいすずもそこにある
         
         そっとちかづいても
         きくことはできない
         
         そっとちかづいても
         かぜになれない
         
         どこかとおくから
         いやもしかしたら
         
         とおくをとおりこした
         わたしのこころのなかで
         
         いろはかたちになり
         おとはことばになり
         
         あおいはなはどこにある
         あおいすずもどこにある

         

   * 挿一輪 *

 春先の茶色の大地では、ささやかな色でも目立ちます。
 
 夜の暗い道に小さなガラス片が光るように。
 
 鮮やかな色彩が氾濫している街では、ささやかな色は消えてしまいます。
 
 なにかを探すときには、周りの色を消すと見つかるかもしれません。


<第1023号 2020年3月22日(日)>

       はるの のに

         はるの のに
         つぶつぶの めが
         はるの だいちに
         おおつぶこつぶの めが
         わくように
         わらうように
         つつむように
         
         はるの のに
         くいっとでた めが
         はるの だいちに
         せのびする めが
         うずうずするように
         とびだすように
         よびかけるように

         

   * 挿一輪 *

 芽はまるい。
 
 芽はふくよか。
 
 芽はあたたかい。
 
 春の大地に、小さな芽を探すように、日々のなかに、小さな笑みを探す。
 
 それだけで、いい。
 
 大地から見上げた空は、慈愛に満ちたひとみ、そのものでした。


<第1022号 2020年3月15日(日)>

       ならんで

         ならんで
         いる
         ならんで
         きく
         ならんで
         みる
         
         はるかかなた
         やわらかな
         はるのそらに
         ふわりとうかぶ
         わたぐも
         
         とりに
         みえる
         いるかに
         みえる
         あなたに
         みえる
         
         ならんで
         すわる
         ただ
         それだけで
         なにも
         いらない

         

   * 挿一輪 *

 並んでみましょう。
 
 向き合うことは時に大切なことですが、いまは並んでみましょう。
 
 大好きなひと、そばにいたいひと、なにかを伝えたいひと。
 
 ただ並んで、おなじ視線で遠くをじっと眺めましょう。
 
 硬かったなにかが、ふっとやわらぐまで。


<第1021号 2020年3月8日(日)>

       はなは

         はなは ひかり
         はなは とびら
         さそわれるまま
         はいってゆく
         
         はなは ひらく
         はなは つつむ
         いつかどこかで
         ふれたことが
         
         ふとふりかえると
         ここはどこ
         ふとのぞきこむと
         ここはどこ
         
         はなは よび
         はなは よび
         まだはるあさい
         かたいだいちに

         

   * 挿一輪 *

 早春の硬い色彩にとぼしい大地。
 
 じっと見ていると、どこかで黄色いひかりが。
 
 黄色は、見つかりやすいようにと、自然が花に渡した春一番の色。
 
 一年ぶりに再会できた友のような懐かしさ、でしょうか。


<第1020号 2020年3月1日(日)>

       はなひらく

         みあげたそらに
         はやざきのさくらのはな
         きのうはひとつ
         きょうはふたつ
         
         つめたいかぜに
         ずっとしたをむいていた
         ふっとなにかによばれて
         みあげたのがきのう
         
         みつめるひとみに
         いちどきがついたなら
         いずみがあふれるように
         
         よろこびもかなしみも
         ひとつのこらず
         はなにしてはるにひらく

         

   * 挿一輪 *

 マスクをつけて、うつむきながら歩く。
 
 目に見えぬなにかに不安を感じながら。
 
 でも、春はもうそこまでやってきています。
 
 咲いている花と目が合うと、それだけでちからをもらえます。






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