2020年10月のこびん

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<第1054号 2020年10月25日(日)>

       はじめよう

         すっと
         しずくが
         すいこまれるように
         あなたにであった
         
         いつからか
         そこにいたのだろう
         きがついたのは
         たったいま
         
         うつむいていても
         みえないあしもとがある
         おもわずみあげても
         みえないそらがある
         
         なにかにであえたら
         ほらもうだいじょうぶ
         しっかりとめをあわせて
         はなしをはじめよう

         

   * 挿一輪 *

 見えていても、認識しないものがあります。
 
 うわのそら、ただ視線がさまよっているだけ。
 
 こころここにあらずで、思い悩むことに気を取られています。
 
 そんなときに、ふと、こちらを見ているものと目が合います。
 
 ずっと、見ていたんだな、って、気がつきます。
 
 その瞬間に、なにかが、動き出します。
 
 止まっていた風が、動き出します。
 
 目があったとき、すべてが始まります、あなたのなかで。


<第1053号 2020年10月18日(日)>

       みしょう

         かぜに
         はこばれたのかもしれない
         
         とりに
         たべられたのかもしれない
         
         いぬに
         ねこに
         くっついてきたのかもしれない
         
         からっぽの
         はらっぱに
         みしょうのき
         ひとつ
         
         めがでて
         そだち
         はながさき
         みをつける
         
         あらたなかぜをまって
         あそぶとりをさそって
         いぬやねこにさわって
         
         たくさんの
         はらっぱに
         みしょうのき
         またひとつ

         

   * 挿一輪 *

 小さな空き地があります。
 
 古い建物が壊され、土の地面のまま放置されて。
 
 なにが建つのではなく日時が過ぎ、土の上には草が茂ってゆきます。
 
 そこになにかの種が運ばれたのでしょう。
 
 実生(みしょう)の木が生え、育ち、花が咲き、種が付きます。
 
 その種はまた、どこか新しい空き地に運ばれて、小さな木に。
 
 そんな木が、とてもいとおしく思えます。
 
 秋の、晴れた日の、青空のした、しんとした、はらっぱ・・・。


<第1052号 2020年10月11日(日)>

       こすもす

         うちゅうとおなじなまえ
         いいえきっとわたしがさき
         
         す がふたつある
         くりかえすかぜがつけたなまえ
         
         いつもゆれつづけている
         かんじゅせいみたいに
         
         す のままでそとにでる
         たとえきずだらけになろうとも
         
         ひとつのきずからはながさく
         うちゅうとおなじなまえのはな
         
         どこまでもこいいろがすき
         わたしのうちゅうのいろ

         

   * 挿一輪 *

 オレンジ色のコスモスの花が好きです。
 
 風にゆれる、濃い色の軌跡が、強い意志を感じさせるからです。
 
 柳の樹もそうですが、ゆれるものは、実は強い力を発揮します。
 
 ゆれつづけるこころもまた。
 
 おそれずに、ひらいて、感受性のつばさを。


<第1051号 2020年10月4日(日)>

       なぜ

         うつむくのは
         なぜ
         じぶんのおもさを
         しっているから
         
         うつむくのは
         なぜ
         はぐくんだたねを
         まもっているから
         
         だいじょうぶ
         あきのひかりは
         まるごとだきしめてくれる
         
         うつむくのは
         なぜ
         いまをそのままいきているから

         

   * 挿一輪 *

 うつむくことは、下がることではありません。
 
 うつむくことは、閉じこもることでもありません。
 
 うつむくことは、自分の成果を、じっと見つめること。
 
 そして、背中に当たった、あたたかな陽ざしをたしかめること。
 
 うつむくことは、とても大切で、必要なことだと思います。




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