2021年10月のこびん

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<第1107号 2021年10月31日(日)>

       はーと


         あめがあがって
         ほしたシーツ
         ひだまりの
         とりこみ
         
         てがとまるのは
         しがみついた
         いっぴきの
         かめむし
         
         おくりものは
         まっしろな
         せなかの
         はーと
         
         きみは
         これから
         しあわせの
         きゅーぴっと


         

   * 挿一輪 *

 どうしても身構えてしまうのが、かめむし。
 
 この季節、よくお会いします、それも、予期せぬ時と場所で。
 
 そっとしておくのが、いちばん、とびかかっては来ないので。
 
 けれど、どうしても、お引き取りを願いたい時が困ります。
 
 今回も、思わず固まりました、でも、それは別の意味で。
 
 こんなにかわいいとは思いませんでした、かめむしの背中が。


<第1106号 2021年10月24日(日)>

       なぜだろう


         あなたが
         わたしをえらんだのは
         なぜだろう
         
         わたしが
         あなたをうけいれたのは
         なぜだろう
         
         だれかが
         すこしこいしくなった
         あきのはれたいちにちだったから
         
         どこかで
         なつかしいひかりが
         うなずくようにだきしめたから
         
         あなたが
         わたしにふれてみたかったのは
         なぜだろう
         
         わたしが
         あなたをそばでみたかったのは
         なぜだろう


         

   * 挿一輪 *

 そうなった、理由。
 
 考えてみれば、いくつも数えられます。
 
 でも、ほんとうは、なぜだったのでしょうか。
 
 寄り添っていることに、なにひとつ、違和感がないということ。
 
 理由を探す必要は、きっと、ないのでしょうね。


<第1105号 2021年10月17日(日)>

       あきのろじに


         だれもいないろじに
         すっとあなたはまっている
         
         さわやかなあきのかぜが
         とうめいなこえであいさつ
         
         あなたもおしゃれをして
         じっとここにいたのだろう
         
         わたしもたちどまって
         かるくえしゃくでむかえる
         
         ろじからぬけたとおりでは
         あたらしいしせつのこうじ
         
         もうすぐないらんかいの
         はりだされたポスター
         
         あきのかぜはすそをめくり
         つぎのろじへかけてゆく
         
         わたしのさったろじにまだ
         すっとあなたはまっている


         

   * 挿一輪 *

 通りから一歩入った、路地。
 
 生活通路なのでしょうが、人影はありません。
 
 ひっそりとたたずんでいるのは、花や樹たち。
 
 秋のさわやかな風だけが、抜けてゆきます。
 
 どこにもない小さな宝物を感じるのは、こんな路地の片隅でしょうか。
 
 秋の路地は、それ自体が、宝石箱ですね。


<第1104号 2021年10月10日(日)>

       ひつじたち


         くものひつじたちに
         ぷろぺらをつけて
         くものひつじたちに
         つばさをつけて
         
         どこまでもやまのほうへ
         どこまでもうみのほうへ
         
         くものひこうきから
         ぷろぺらをとって
         くものひこうきから
         つばさをとって
         
         もこもこのひつじたちを
         まっしろなひつじたちを
         
         ぽけっとにいれて
         あきをあるきたい


         

   * 挿一輪 *

 空の青と、雲の白。
 
 たった二色なのに、いつまでも見飽きません。
 
 青のグラデュエーション、白の群れ。
 
 立ち止まって、見上げて、乗ってみませんか、秋の空に。


<第1103号 2021年10月3日(日)>

       みちしるべ


         ここまで
         すすんできたのか
         これから
         すすんでゆくのか
         
         さきっぽの
         あなたに
         どうするのか
         きいてみたい
         
         ここまで
         めざしていたのか
         これから
         はじめてゆくのか
         
         かぜにゆれる
         あなたに
         そっとならんで
         かさねてみたい


         

   * 挿一輪 *

 道しるべは、自分が見つけます。
 
 道しるべは、自分で作ります。
 
 道しるべは、あなたの道にあります。
 
 道しるべは、あなたのためにあります。
 
 だから、しっかりと、道しるべを刻んでください、あなたのなかに。






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