2022年4月のこびん

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<第1132号 2022年4月24日(日)>

       めくる


         いちまいめくる
         ひらりと
         まっしろないちまい
         だれもいないいちまい
         
         いちまいめくる
         ひょいと
         めをこらすいちまい
         あわててかくれるだれか
         
         いちまいめくる
         よいしょと
         みたことあるいちまい
         うつるわたしみずかがみ
         
         いちまいめくる
         つつっと
         まっしろないちまい
         まいにちひらくいちまい


         

   * 挿一輪 *

 本を読んでいます、ページをめくります。
 
 花びらが落ちています、そっとめくります。
 
 布団を干します、ふかふかをめくります。
 
 風が吹きます、裾をめくります。
 
 暗闇に針が重なります、暦をめくります。
 
 きっと、出会いがあります。
 
 面白いことが、あります。
 
 あなたのいのちが、新しいページをめくります。


<第1131号 2022年4月17日(日)>

       たのしむ


         かなしみは
         あたまのひだりはんぶんに
         まかせきって
         
         あたまのみぎはんぶんで
         のこりのぜんぶを
         たのしむ
         
         ないていたこが
         すぐにわらいだすように
         おもちゃをみつけだし
         たのしむ
         
         もしもかなしみが
         あたまのみぎはんぶんにまで
         はいりこんできたなら
         
         あたまをぽんとおいといて
         しんのリズムで
         トッ トッ トッ トッ と
         たのしむ


         

   * 挿一輪 *

 悲しむことは、いつでもできます。
 
 毎日、色づいた悲しみに、つつまれているから。
 
 一方、楽しみは、透明になって見えなくなってしまいます。
 
 声に出して呼んでみましょう。
 
 楽しみは、すぐそばに潜んでいるので、いつでもやってきます。
 
 子どもは、楽しみを呼ぶ天才です。
 
 悲しみと楽しみは、交互に形を変えて、いのちの糧になります。


<第1130号 2022年4月10日(日)>

       つづける


         はるのひざしのまんなかで
         きいろいひとたちがかがやく
         
         あっとうてきなあなたたちは
         ひとめでだれをもひきつける
         
         もんしろちょうもみつばちも
         あなたたちにもぐりこむ
         
         だいちにちかいわたしたちは
         ともすればだれかにふまれ
         
         でもおひさまはびょうどうで
         あめのしずくだってかわらない
         
         わたしたちはじっとまつ
         ときどきまよいごがとおるのを
         
         はるのまんなかでだけ
         あなたたちはかがやくけれど
         
         わたしたちは はるなつあき
         ふゆのひなたまでさきつづける


         

   * 挿一輪 *

 川の土手に、一面の菜の花。
 
 だれもが、わあきれい、と、立ち止まります。
 
 もう少し近くで見たい、その一歩が土手のタンポポを踏んでゆきます。
 
 でも、タンポポは耐えて待ちます。
 
 雨も陽光も平等に降り注ぎ、小さな虫たちもやってきます。
 
 なんといっても、菜の花は春のみ、タンポポは一年中花を咲かせます。
 
 タンポポのまんまるの花は、咲き続けてね、と、笑ってくれます。


<第1129号 2022年4月3日(日)>

       そそぐ


         だれがこぼしたの
         あふれんばかりのひかり
         まぶしくてせつなくて
         ひとこともはなせない
         
         そらにはなんにもない
         すっぱだかのまま
         このほしはうごいている
         
         はなびらのひとつになる
         はばたきのはおとになる
         かけぬけるながれになる
         
         からだでうけとってもいい
         おしみなくつたえてもいい
         あそびながらきいてもいい
         はずむいきになってもいい


         

   * 挿一輪 *

 春になって、そそぐもの。
 
 あふれんばかりの、光。
 
 惜しみなく与えられて、しっかりと吸収したいものです。






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