2022年5月のこびん

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<第1137号 2022年5月29日(日)>

       うつる


         ふたつあるけしき
         まどのそとがわと
         まどのうちがわ
         
         ふたつあるこころ
         あなたへのたてまえと
         わたしへのほんね
         
         あかるいうちは
         ごまかすことができる
         けれど
         
         くらくなったら
         のぞきこんでごらん
         ほら
         
         あかりのしたで
         ずっとかくれていた
         ひとみがうつっている


         

   * 挿一輪 *

 窓ガラスに映った外の景色、中は見えません。。
 
 けれど、暗くなると逆転します。
 
 窓ガラスには中の景色が映ります、外は見えません。
 
 窓ガラスは、だれかのこころに似ているのかも、しれませんね。


<第1136号 2022年5月22日(日)>

       むく


         うえをむけ
         だれかがそういう
         からだのなかから
         
         うえをむけ
         だれかもそういう
         そらのかなたから
         
         うえをむけ
         なぜかはわからない
         ひびきつづけるリズム
         
         うえをむけ
         かぜとあめにおれたひから
         たえまなくずっと
         
         うえをむけ
         うえをむく
         いきるラインがつながる


         

   * 挿一輪 *

 季節外れの暴風雨が通り過ぎて、雨上がり。
 
 背の高い草花は、地面に倒れています。
 
 大事に育てた庭の花なら、主が起こして支え棒をつけてくれましょう。
 
 けれど、雑草たちは、だれも助けてくれません。
 
 でも、なにか呼ぶ声が聞こえます、上を向け、上を向け、と。
 
 立ち上れなくても、花だけでも上を向け、と。
 
 大地のなかから、空の太陽から、それ以上に、からだのなかから。
 
 一本の線が立ち上ったとき、新たな一日がはじまります。


<第1135号 2022年5月15日(日)>

       わすれる


         たんぽぽのたねをふいたのは
         わすれない
         いつどこでふいたのかは
         わすれる
         
         わたげのいきくすぐったさは
         わすれない
         となりのいきだれがいたのかは
         わすれる
         
         ひみつきちでのわらいごえは
         わすれない
         たからものをどこにかくしたかは
         わすれる
         
         あしたのことをはなしあったのは
         わすれない
         あしたをさがしてきたみちすじは
         わすれる


         

   * 挿一輪 *

 ひとは、忘れます、気持ち良いほどに、大事なことまで、忘れます。
 
 年齢に関係なく、場面に関係なく、都合の良いこと悪いこと、忘れます。
 
 では、振り返って、なにも覚えていませんか。
 
 いえいえ、脈絡もないまま、ピンポイントで覚えているものがあります。
 
 それにしても、忘れることって、いけないことですか。
 
 それにしても、忘れることって、恥ずかしいことですか。
 
 忘れて忘れて忘れ続ける、それが、自分です。
 
 そんな自分が、生きていることだけは、忘れません、自分の身体が。
 
 そんなけなげな身体は、忘れずに大切にしてあげてくださいね。


<第1134号 2022年5月8日(日)>

       まじわる


         とりのはばたき
         とりのさえずり
         ふっとみあげる
         ごがつのそらに
         
         いつからだろう
         どこからだろう
         ずっとつながる
         とうめいなせん
         
         ここでまじわる
         ここにたたずむ
         ここをとびだす
         
         とまらぬてんは
         ささるせんたん
         ぎんいろのはり


         

   * 挿一輪 *

 だれかに、出会う。
 
 交点は一点ですが、それぞれの生きてきた長い線の交わりです。
 
 線のはるかむこうまでつながる時間が、この一点で収束して、出会い。
 
 ポツンと途切れている、突然出現した、わけではありません。
 
 目の前の景色は、ターミナル駅に止まる無数の電車のよう。
 
 時刻が来ると、また、それぞれの目的地に向けて出発します。


<第1133号 2022年5月1日(日)>

       もどる


         とおりすぎて
         ふっとおもう
         なにかがきになる
         
         そのままいきな
         でもたちどまる
         せなかをよびとめる
         
         そういえば
         なにか みていた
         そういえば
         なにか ささやいた
         
         かぜがくるっと
         こしをめぐる
         もどってみたら
         たしかめてみたら
         
         とおりすぎるとき
         いつでも
         もどるじゅんびは
         できている


         

   * 挿一輪 *

 戻るって、意外と難しいものです。
 
 特に、目的地に急いでいるときは猶更。
 
 でも、ふっとひっかかることがあります。
 
 なにかが、だれかが、呼んでいたような。
 
 立ち止まって、あれ?って。
 
 もしかしたら、いえ、たいがい、気のせいかもしれません。
 
 でも、直感って、正しいものです、なにかに出会ったのです。
 
 習慣づけると、感覚が磨かれて、出会いが多くなります。
 
 いつでも通り過ぎると、ただ、移動するだけで感じなくなります。
 
 あなたは、どちらが好きですか?






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