*** 8月の詩 ***

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      切り絵


夕暮れ時の
座った猫の背中

道に積み重なる
キョウチクトウの落ち花

にいにいぜみの鳴き声
何匹も何匹もいっせいに

かたつむりの干からびたカラ
耳にあてたら何が聞こえる

子どもじみてと振り返らなかった
手に取ることをしなかった
小さなヒズミがひとつひとつ重なって

ぼくの落としたもの
きみのなくしたもの

今では二人とも分かっている
いつどこでかも
風の突然の止まり方を知っているように

切り刻み方を間違えて
二人だけが抜け落ちた切り絵

黒い枠のなかに
夕暮れの時間がゆっくりと閉じてゆく



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