***  10月の詩  ***

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 おしえてください


あなたの見つけたもの
おしえてください
あなたの受け取ったもの
おしえてください

じっとみつめているから
耳をかたむけているから

あなたの熱で抱きしめたもの
おしえてください

あなたの見つけたものは
あなたといういのちが見つけたもの
どんなに小さなものでも
あなたの熱いいのちが抱き寄せたもの

あなたの感じたもの
隠さずにおしえてください
恥ずかしがらずにおしえてください

そっとおしえてもらったら
わたしはしっかり受け取ります
わたしの熱で受け取ります

あなたの見つけたもの
おしえてください
あなたの伝えたいもの
おしえてください

 金木犀(きんもくせい)


なつかしいうたが聞きたくなる
なつかしいうたを歌いたくなる

あの頃の本を読みたくなる
あの頃の写真を見たくなる

思い立ってふるさとを訪ねてみた
けれどふるさとは
自分のなかにだけ
いつまでもあるものとわかった

うなだれて帰るとき
強い匂いに呼び止められた
顔を上げたら
輝くように金木犀の花が咲いていた

金木犀は変わらない
変わったのは
そばをうなだれて歩くわたしのほう

鬼ごっこの鬼を追って
一瞬立ち止まり
また駆け抜けていったわたしのほう

あの頃と呼ぶ哀しみは
後ろ向きのわたしのなかにある

金木犀は
変わらぬ匂いをふりまいて
陽だまりのなかで
黄金色に揺れている



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