夢 それはささやかなもの 目の前の たとえば陽だまり そっと歩みを進めること 夢に大きさは必要がない ひとつひとつ めざして かなえて そしてまた次 ずっと向こうまで見えなくていい そんなに遠くまで見ていたら 足元が怖くなって その場から一歩も動けなくなってしまう 夢 すぐ目の前で手を差し伸べてくれる ささやかな近さがいい 歩み始めた幼子が 母の手を求める距離がいい はるか彼方を見続けないこと 気がついてふと振り返ると そっと見送る昨日の自分 うなずいて前を向いて その繰り返しで 人は生きていけるのだから |
音 音は呼吸する たたく音 すわる音 ハレツする音 逃げてゆく音 まるで大きな肺の中にいるように 吸って 吐いて 深呼吸する音 音は体をたたく 音はこころをゆする すぐに振り向いても しばらく気がつかなくても 生きている自分のどこかが 反応する 夢にだってやってくる 生まれる前でもやってくる もしかしたら 死んでしまったあとにでも 音はひとつひとつの波だと 人間の科学は説明する うんうんとうなずきながら その動きからも音が出る 音は呼吸する 呼吸するすべてのものを 振り向かせることばだから |
||
Copyright© 2004 Shiawase no Kijun