***  12月の詩  ***

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 待つ


待つときがある
小さな踊るリズムが
ふとあらわれるときを

待つときがある
ふと目にとまるものが
あなたのなかで
新しいなにかをつくりだすときを

そういうときは
じっとたたずんで
あたためて
あなたをあたためて
待っているんだ

風は吹かない
けれど待っていると
風のことを考えることができる
風になびくあなたの髪を思うことができる

その思いが風を呼ぶ
はるかかなた
地球の裏側からでも
風を呼ぶ

待つときがある
それはきっと
待つものを
あなたのなかで呼んでいるから
こころのなかで呼び続けているから

待つことは決してむだではない
明日に向かって
あなたが希望を持ち続ける証拠だからだ

 手紙


手紙が届く
親しい友だちからでもなく
なつかしい恩師からでもなく

手紙が届く
海の向こうの見知らぬ言葉でもなく
はるかかなたの星からの波長でもなく

もっと身近な人
もっと長い時間を過ごした人
たった一冊の生きたアルバム

生まれたころ
はじめて恋をしたころ
だれかを抱いたころ
だれかに抱かれたころ

目の前にふと浮かぶくせに
遠く離れてしまった気がする
もう隠していることなどないくせに
まだ秘密の扉があるような気がする

鏡に映した顔は
いつのまにか見知らぬ人
あなたはだあれ

のぞきこむあなたに手紙が届く
もがき続けて生きてきた
小さな通過点の記録が届く

封を切らずに胸に当てると
オブラートのように溶けてしまう
ささやくような手紙が届く


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