***  8月の詩  ***

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 つめ


つめはのびる
哀しいことがあっても
苦しいことがあっても
のびる

友だちとけんかしても
思わぬ贈り物をもらっても
のびる

ころんでも
大声で笑っても
だれかと見つめあっても
のびる

あとからあとから
生きてきた時間を
生きていたあかしを
積み重ねてゆくように
のびる

のびて
哀しさや苦しさを忘れるように
パチンと切り離しても
次の日には
のびている

なあ つめよ
おまえはあとどれくらいのびる
おまえをあとどれくらい切り続ける

ピンクのあたたかさから離れ
ひんやりとした白いつめを切る

通り過ぎた自分に
ご苦労様と声をかけて
つめを切る



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