***  6月の詩  ***

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 あじさい


角を曲がったら
ひょいと出会った
大きなあじさいの花

ちょんとつつけば
雨が降り出しそうな
6月の空の下

のぞきこむように
立ち止まったのは
学校帰りの女の子

まるで空の色のように
泣き出しそうな顔をして
そっと指であじさいに触れた

ほらぽつりと

それとも


あじさいの花たちは
そばでじっと見てみると
小さな花たちのあつまり

となりの小さな花に
ひしめきあった小さな花は
同じ顔などひとつもない

とても大切な秘密を
そっと教えてもらったようで
女の子はくすっと笑った

大粒の雨は空にまかせて
あたたかなしずくは
ゆっくりと
胸に染み込んで消えた







6月の詩 あじさい

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