***  9月の詩  ***

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 風速計


君は教えてくれる
上空の透明な風を

君は教えてくれる
鼓膜を揺らさない風を

変化のチケットに気づかずに
うつむいて
通り過ぎようとしているわたしに

君は教えてくれる
ほんの一歩横に動くことを

君は教えてくれる
ほんの一歩階段を昇ることを

新しい出会いのはじまりは
新しい夢のはじまりだと
気づきはじめたわたしに

見上げたら君がいたんだ
なんにもない青空のまんなかに

はにかむような微笑みだけで
ついと気をひく少女のように

どんなささやかな風でも受け止めて
どんなささやかな兆でも受け止めて

風はいつも通り抜ける
わたしの高く上げた両手の少し上を
君の広げた光る両手のなかを

君は風速計

くるくるまわれ
青空のまんなかで
くるくるまわれ
こころのまんなかで






9月の詩 風速計

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