***  4月の詩  ***

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 サクラの名前のついた駅


サクラの名前のついた駅は
各駅停車しか止まらない
いつも急行の通過待ち

冬には冷たい風が吹き込み
文庫を持つ手もかじかむけれど
月を重ねて春の声

少し風が和らいだ
差し込む陽射しもまぶしくて
ふと見上げるとサクラの樹

開花宣言出されたあとに
しばらく花冷えが続いたから
すっかり忘れていたけれど

ここ数日のあたたかさ
いつのまにか樹そのものが
薄桃色につつまれて

文庫のしおりをそっとはさみ
はじめてホームにおりてみた
そういえばいつも車内で通過待ち

サクラの花を見上げたら
空の高さに気がついた
寄り添うサクラに気がついた

発車のベルが鳴ったけど
もうしばらくここにいて
サクラの花と一緒にいたい

サクラの名前のついた駅は
各駅停車が出たあとは
風と陽射しとサクラの香り

たったひとりのつもりでも
たったひとりではないホーム








4月の詩 サクラの名前のついた駅

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