***  4月の詩  ***

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 影の花


今日もテレビでは
止まることなく流し続けている
光のなかの世界

どんなに暗い部屋の片すみでも
小さなスイッチの一押しで
どこにでもすり抜ける魔法の世界

でもそこにはぼくの影がない
どんなに小さな道端の花も
どんなに小さな石の粒も
自分の影をもっているというのに

満開のサクラの下に
満開の影の花が揺れる

ぼくがこうして
太陽をまぶしげに見ているうしろに
影の姿がよりそうように

生きているということは
影をつくるということかもしれない

たとえ触れることはできなくても
ぼくがいる限り
その一点を起点にして

たしかな足取りが
大地と空を光と影の架け橋で結び
影はまっすぐにのびてゆく

満開のサクラの樹の下で
ぼくの影はサクラとひとつになり
ここでたしかに生きていることが
不思議にいとおしくなる

風と一緒にかけぬけたあとに
なにひとつ形が残らなくても








4月の詩 影の花


4月の詩 影の花

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