***  7月の詩  ***

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 空一路


まっすぐに駆けてくるというのなら
空は
きりりとしたろ紙

透明な針の雨を
こんなにも浴びながら
傷つくこともなく
だれもが会話を続けている

光が色と似ているために
ずいぶん長いあいだ
思いこまれていた伝説
夕暮れの帰り道に落ちていた
小さな光る宝物のように

重ねてみれば
すぐにでも分かったはずなんだ

色は目を閉じるかのように
どこまでも暗く深く沈み
光はそっと目を開くかのように
透明な母体に溶けてゆく

なぜ空は青なのだろう
こころのなかにも
空のように
一枚のろ紙がある不思議

一路に通り抜けようとしても
光は
それぞれのこころに染まり
不必要なものはすり抜けて
水蒸気のように空に帰る

もう戻れない
見えないからといって
ただそれだけで
なにもないと信じたあのころには








7月の詩 空一路

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