***  3月の詩  ***

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 春の点字


なにもない大地に
風が探している
もうそろそろ
出ているはずの伝言

昇ったばかりの朝陽が
そっと耳打ちするように
大地の乾いた肌を掃いてゆく

風はピカリと光って
地面すれすれをすべりながら
透明なてのひらで
うまれたばかりのつぶやきに触れる

そういえば
どこかで触れたひらめきは
少女の細い髪に似た
やわらかな恥じらい

そういえば
どこかで聞いたことばは
眠りから覚めるまえの
けだるいやさしさ

風は昨日と違った
新しい出会いの感触を
指先の点字のように
ひとつひとつ
慈しむようにひろってゆく

あたり一面
陽だまりになるまえに
春のため息をいっぱいに背負って

風は
おもいっきりかけのぼる
まだ白く閉ざされた町をめざし
天蓋をはずした青のなかを









3月の詩 春の点字

3月の詩 春の点字

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