***  8月の詩  ***

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 並行景


ならんで走る列車の窓
じっとこちらを見つめるのは
いつも見慣れている確かな輪郭

頬杖をついて座るのは
不思議そうにじっと見ている
ガラスへの映りこみではない
もうひとりのわたし

考えてみると
生きている道は
細い一本の道ではなくて
こうしてならんで走る
列車の窓に似ているのかもしれない

毎日を歩みながら
もうひとつの世界では
まるで異なった毎日が
重なるように動いてゆく

たとえばむこうの時間は
流れる空気が澄んでいる
思い出という循環のなかに
閉じこめられたふるさとのように

行きたいときに
思いのままに
溶けるように移れる約束
大きな透明な窓がここに

幻ではない隠すこともない
重なって生きてゆける
いくつもの世界をいつでも

並行して走る列車の線路が
ゆっくりと離れて消え
ホームにすべりこむ
そのときまで








8月の詩 並行景

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