***  12月の詩  ***

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 12月の虹


バケツ五杯も取れたからと
おすそ分けに預かったゆず

きっと昨日の朝の
大きな半円の二重の虹を
からだいっぱいに
浴びて来たに違いない

12月の虹はめずらしいねと
嵐のような雨の後に
窓を開けて二人で見続けた虹

ゆずでなくても
大きな虹を見ただれもが
呼吸のすみずみまで
七色の光を吸い込んだに違いない

虹のふもとは頼りないと聞くけれど
あんなにしっかりと
押し出すような光の束は
もうこの夢の色で
一冬を越しなさいという
今年最後のメッセージ

虹を歩くことはできないが
たどることはできる
虹を作り出すことはできないが
いつまでも思い描くことはできる

人はこうして
できないものをひとつひとつ
こころのなかに刻みながら
ゆずのように不恰好でも
ささやかな夢の色を
育て続けてきたのだろう

12月の虹は
夕陽色の体を染み出して
冬至の湯船に
七色の架け橋をかけるに違いない








12月の詩 12月の虹

12月の詩 12月の虹

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