***  4月の詩  ***

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 しずく


しずくの下には空が溜まっている
忘れ去られた海のように

とまどいに耐えているのではない
下半分の空の重みは
故郷への憧れもあるのだろうに
飛んで昇華するわけでもない

冷たいガラス玉の蓑虫のように
自分にふさわしいだけの
からだにもてるだけの
雨という名の空の涙

ただそれだけを
抱きしめて抱きかかえて
静かにあまねく境界を閉ざす

ああそれにしても
いのちというものは
薄くて壊れやすくて危うい衣を
不均衡の真ん中で
平然とさらしているのだろう

時間の雨が降りしきるなか
どうして澄みきって
微笑んでいられるのだろう

均衡は崩れる約束があるから
思いつくままに
つかのまの形をとどめることができる

あなたよ
しずくを想い慕うないたわるな
触れるな息をかけるな声をかけるな

もうまっすぐな道は
光る錘を導き始めている
ついーっという音すらなしに
しずくという名を溶かしてゆけ








4月の詩 しずく

4月の詩 しずく

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