***  6月の詩  ***

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 やじろべえ


ゆらゆらゆらり
やじろべえ

綿毛が飛んでも
さえずり触れても
バラの花の匂いでも
ゆれている

ゆらゆらゆらり
やじろべえ

雨に濡れても
暗闇でも
だあれもかまってくれなくても
ひそひそ噂にのぼっていても
時には半分落ちかけて
空に刺さるくらい傾いても
じっと守り続けたことがある

ゆらゆらゆらり
支える一点
針の先ほどの小さな一点
何が何でも動かずに
さそわれてみても動かずに

だからこうしていつまでも
ゆらゆらゆらり
好きに勝手に動かせる
長い両腕を不器用に
生きている証に動かせる

ゆらゆらゆらり
やじろべえ

そろそろ時間に食べられて
そろそろ迷いに食べられて
ぽとりと水滴落ちるように
つつっとすべった
初めてすべった
不動の誇りの小さな支点








6月の詩 やじろべえ

6月の詩 やじろべえ

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