***  8月の詩  ***

戻る


 花のうなじ


花のうなじに見えるものは
後ろにまわっても見えません

葉のかいなに見えるものは
薄く切っても見えません

根元のくぼみに見えるものは
ふいに掘っても見えません

だからといって
あきらめて
とぼとぼ家路をたどるのは

だからといって
いじわるく
地から無理やりはがすのは

羽を落としたちょうのよう
針をなくしたはちのよう
澄んだ鏡をなくします

群青色の濃い風が
船の泊まりにゆれるよに
ゆうららゆららゆうられと

たそがれ辻のさびねこが
石にひっそりすわるよに
しんららしららしいられと

ただじっとそばにいて
目を閉じ耳置き口あけて
そのまま宵の花になり
そのまますんと待ちぼうけ

見えることなく終わっても
うすら闇粒溶かしても
からっぽこころはそのまんま

もういいかい とは聞かないで
まあだだよ とも言わないで








8月の詩 花のうなじ

8月の詩 花のうなじ

Copyright© 2011 Shiawase no Kijun