***  1月の詩  ***

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 一日回数券


売ります「タンポポ色の回数券」
切符売りのおばさんが
夢のなかでささやいた

寝ぼけまなこで身につけた
ズボンのポケットには
財布を入れた覚えはないが

右手に一枚空色のお札
「おうやあぶない最後の一冊」
ポンと引き換え回数券の束

表には香りのついた風の字で
毎日の日付が刻印され
凹凸手触り心地よい
「当日限り有効」パンチ穴

小さな懐かしいターミナル
音生む靴に虹色背びれ体の倍の白い羽
一輪車から自転車三輪車
乗り合いバスまでお好きなものを

赤いネクタイのひらひらポスター
「券一枚でどれでもひとつ借り放題」
「お試し自由乗り換え自由」
「でもこれだけはご注意ください」
「日付が変わるとリスタート」

朝陽が昇って体を染める
にぎった束から今日の分
するりと抜けて陽炎に

「毎度ありがとうございます」
乗るなと迷うなとベンチで寝るなと
だれにも平等ひいきなし

今日一日限り有効の
再発行絶対なし
もちろん自分限定譲渡不可
新たな年の回数券








1月の詩 一日回数券

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