***  2月の詩  ***

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 銀色の目


落ちていた
銀色に光る二つの目

裾の長い光が
北風に乗って砕ける
立春の午後

車の途切れることのない
路肩の下水溝の蓋のわき

飛び出した半円形のカエルの目
にしてもその澄みようといったら

のぞきこむこちらの顔も
顔の後ろの飛び去るハトも
針金細工の樹の枝も
なんといっても
パノラマの青い冬の空までも

ぶれることもなく
ぼけることもなく
しゃっきりととらえている

狙っているはずだ
いちばんおいしそうな獲物を
その目のなかに隠してある
とぼけた罠は光のすり鉢

しゃがんだ横を
ビニール袋が走り飛んでゆく
つかまっては大変と
警告の目つぶしをまき散らして

埋もれていた
銀色に光る二つの目

どうしても見たい
ぎょろりと動く目のおくに
とらえられた初めの春を







2月の詩 銀色の目

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