ここで生まれたんだ
空に近いここで
ずっとまえから
小さな種のときから
あこがれていたんだ
すこしでも
ほんのすこしでも
だれよりも
空に近いところにいたいと
風がはこんでくれた
あの旅立ちの日
緑の衣をまとった母のなかで
声だけ聞いていた風が
ここで生まれたんだ
空に近いここで
からだいっぱいに
太陽の光を浴びて
からだいっぱいに
雨の恵みを受けて
シジミは遊びに上がってくる
スズメはとなりで休んでゆく
なんといっても
あの風から
毎日話をきくことができる
ここで生まれたんだ
空に近いここで
大きくなったら
こんどは自分の子どもたちに
海のことを聞かせるんだ
いつも風から聞いている
はてのない未知の明日のことを
