***  10月の詩  ***

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 さらち


ふと
立ち止まる
だれかが
いない
いつも気にしていたわけでも
声をかけたりかけられたりした
そんなわけでもない
ただ
いつもここにいた
だれかが
いない
視線のかたすみで
すれ違う風の音で
なつかしいにおいで
どこか
安心していた
いつでも会えると
信じていた
そんなだれかが
いつのまにか
いない
どこかへゆくと
告げられたわけではない
引っ越しました
便りがきたわけでもない
でも
たしかなことは
ここにいない
もうかすかにもいない
かげもない
どこにいったのか
ひだまりに聞いても
草花に聞いても
風に聞いてもわからない
もう二度と会えない
未来永劫に会えない
たいせつなたいせつな
だれかをなくしてしまった
たったいっときの
みずからの怠りのために








10月の詩 さらち

10月の詩 さらち

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