***  12月の詩  ***

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 ただそこに


手を合わせることだけが
祈りではない
じっと見つめることも
耳を傾けることも
たしかな祈りなのだ

遠くへでかけることだけが
祈りではない
ふと立ち止まった場所も
一日の終わりの枕の上でも
ふかい祈りなのだ

深い深い地中の水脈から
一生をかけて汲めるものはいい
高い高い空の彼方から
奇跡のように受け取れるものはいい

けれど

小さなもみじのような手が
深いしわに刻まれた口が
今日の陽だまりのなかで
あどけない遊びをくり返すのも

やわらかな陽だまりで
セキレイがつつっと止まり
柏の実が落葉の上にころがり
タンポポの花がゆれ
だれかのビー玉が光の信号を送るのも

どんなかたちでも
どんなに身近でも
どんなガラクタみたいでも
ひとつのこらず
祈りそのものなのだ

ただそこに

祈るあなたさえいれば
祈るいのちそのものさえあれば








12月の詩 ただそこに

12月の詩 ただそこに

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